なよし氏が描くこの「心と身体のほぐしやさん」は、ジムでのトレーニングに励む主人公が抱く先輩への純粋な憧れと劣等感を、怪しげなマッサージ師が催眠という手段で巧みに利用する、残酷かつ背徳的な名作です。肉体描写に定評のある作者らしく、鍛え上げられた筋肉の質感や汗の表現が素晴らしいのはもちろんですが、本作の真骨頂は「視覚と認識の改変」にあります。アロマとマッサージによって意識を混濁させられた主人公が、目の前の施術師を憧れの「渡辺先輩」だと錯覚し、偽りの愛撫に心も体も許してしまう展開は、読む者の胸を締め付けるような切なさと強烈なエロスを同時に提供します。本人は想い人と結ばれた幸せな夢の中にいるつもりでも、現実には見知らぬ男の玩具として開発され、搾取されているという救いのない構図、そしてその状況下で見せるトロトロに蕩けた表情の描写力は圧巻で、催眠ジャンル特有の昏い愉悦を存分に味わえる一冊となっています。