深淵探求さんのレビュー一覧
レビュアーランキング | 411位 | (役に立った数:268件) |
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投稿数ランキング | - | (総レビュー数:95件) |
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女性向けの創作物は大体恋愛を前提にするか恋愛の前哨戦みたいな設定を取ることが多いんですが、本作はドライな契約関係を前提にしている類稀な作品です。強いて言うなら女性たちの執事ファンタジーを現代風に解釈した作品だと言えますかね?女性向けはエロも非エロも恋愛と結婚が中心の作品が大多数なので男性向けより素材が被りやすいんですが、かなり稀で独特な設定の女性向け作品でしたので購入させていただきました。
男性主人公はやはり女性向け作品なので「外見だけ男子、中身は女子」って気が拭えないんですが、女性のファンタジーによく出てくる理想的な爽やか系男子を忠実に再現しています。膣トレーナーという立場も相まってまるで「初恋の先生」みたいな雰囲気を漂わせます。教師と学生の恋にロマンを感じる方々には結構刺さるんじゃないでしょうか。
色々と独特で興味深い作品です。素材が被りまくる女性向け作品らに飽き始めている方には良い刺激なんじゃないでしょうか?自信持ってお勧めします。
レビュアーが選んだジャンル
前作は女性の性的ファンタジーに徹底した内容でしたが、本作は物語の設定の上でそれぞれの人物たちの心情描写がメインの純愛作品になっています。かと言ってエロで手を抜いている訳ではないんですが、エロは本当にただ純愛のための手段でしかなく描かれています。ぶっちゃけエロを取り除いてドラマ化しても大差ないんじゃないって思えるくらいですね。その分前作とは展開の趣旨が大きく異なります。
非エロ少女漫画特有の込み入った心情描写と感情の変化による展開を好む方々になら自信もってお勧めできる作品です。
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2024年01月25日
原作になっている音声作品は聴いてないんですが、作画に釣られて購入させていただきました。最後まで読んだ感想を端的に言えば欧米の「Fifty Shades of Grey」にもっと狂気を加えた日本版の退廃主義作品です。韓国の女性向けウェブトゥーンの中でもこういう「狂気の中に確かに存在する愛情」をテーマにする作品は多いですが、ここまで「狂気」サイドに力を入れた作品は初めて見ます。
ぶっちゃけ男性主人公のケセドさんが莫大な遺産を受け継いだ御曹司か何かじゃないとこの作品は成り立ちません。こんな狂人、仕事できる訳がないし、できたとしても任せる人なんている訳がないですから。作中ではこのことに全く触れていませんが、もし作中でケセドさんが用意した「飼育部屋」が借金で用意された部屋で、ケセドさんが実は借金塗れの貧乏野郎だったら、と想像するとあっという間に作品によって掛けられた「魔法」が解けていく感覚を味わえます。愛情も糞もなくなって狂気しか残らないし、恐怖でしかなくなります。
作画を担当したparasite gardenさんもこの弱点に気づいていらっしゃるようで「飼育部屋」の内装の作画は非の打ち所がありません。どこをどう見ても頭おかしい金持ちのお坊ちゃんが趣味で作った部屋って感じがプンプンします。歪み切っているし狂気でしかないけどちゃんと「ウサギちゃん」にも愛情を持っているので、終始一貫「ウサギになり切って楽になれば?」と誘ってきます。人間としての尊厳、成人女性としての品格、個人として築いてきた今までの人生...その全てを諦めてただ可愛がられるだけのペットにならないかってしつこく囁いてきます。飼い主のケセドさんの財産がこの構図から抜ければ人生を無暗に破壊されるホラー話になりますが、ケセドさんの財産が作中で保障されることで悪魔からの甘い誘いに崩れていく歪だけど確かな愛情が存在する歪なロマンス漫画になります。
主役の二人は元カノ、元カレではあるんですが、現実の別れたカップルみたいにお互いを目の敵にしたりはしていません。むしろ序盤では元カノ、元カレと言うより結構親しい親友、あるいは幼馴染って感じの親近感があるほどです。元カノが元カレに催眠術を頼んできたのも「時岡君なら私の性的な問題を真面目に聞いてくれるはず」という信頼に基づいた行動なので二人のお互いへの好感度は最初からかなり高いと言えます。
こういう高い信頼感を持っている二人ですが、人柄自体は二人ともただ「エロいことがしたい、恋がしたい」と思う普通の未熟な若者たちなので没入しやすいです。もし二人が真っ当な大人過ぎていたらこういう感じにはならなかったでしょう。そうだったら元カノ・元カレじゃなく本当に夫婦に見えちゃってたかも知れません。
けど、そんな普通にエロい恋がしたい二人ですが、ちゃんと相手の気持ちを配慮して自分の欲情を制御したりして未熟者なりの優しさを見せてくれるのでむしろ見てて微笑ましくも感じました。女性向け作品なのに元カレ君が予想外の勃起で困ってたり、元カノのエロい姿に欲情してすぐ襲いたいのに我慢するシーンとかがあって面白かったです。女性向け18禁漫画作品で男性キャラって大体何があっても取り乱さないキャラになりがちですが、本作の元カレ君は人間味があるし、ちゃんと男の子してるし、色々と可愛い時は可愛くても頼もしい時はちゃんと頼もしい姿がすごく好感持てました。勃起云々のところは一瞬男性向け作品を読んでるようにも感じました。
元カノのしまかちゃんもそういう元カレの優しさに甘えすぎずちゃんと立場を弁えて行動していて女性向け作品によく出てくる男に甘えっぱなしの女性キャラとは違って好感が持てました。全体的には元カレに助けられる構図なのは変わらないんですが、助けを求めた側としての立場を意識し続けるところが未熟者なりに頑張ってる感じでよかったです
2024年01月16日
性教育って大事なんだな…って思い知らせてくれる作品です。本作の主人公、万里小路かやのははっきり言って痴女です。大事だから二回言いますが、「痴態を晒す女」と書くあの「痴女」です!まぁ、まだまだ性知識が芽生えた程度なので男性向け18禁作品に出てくる痴女ほど欲望も谷間も太腿も丸出しの恰好で男を狩りまくる歩くラブドールに落ちぶれてはいないんですが…「素質」はあります。なんて末恐ろしい娘…!
個人的に今までの人生で見たどの作品に出てくる女性キャラよりも性的好奇心が強いです。男性向け18禁漫画も含めてです。すごくないですか?それほどやばいんですよ、この娘。まさに前代未聞です。
そんな痴女が名家の令嬢という身分に守られながら周りの男性たちに甘やかされるってのがこの作品の主要な内容ですね。全く痴女が痴女らしい行為に走るには最適の環境だと思います。ストーリーはそれなりに作り込んでいますが、ぶっちゃけ終始一貫繰り返される主人公の奇行に驚かされっぱなしで余り頭に入ってこなかったです。
ある意味、この作品は性的好奇心溢れる女性たちがどう世間渡りをすればいいのか教えてくれる良い教材だと言えます。確実に保護されるだろう身分を確保して、その上で欲望を出す時は外見も言葉遣いもなるべく上品に保つこと、くらいですかね。「ぐへへ」なんて変な笑い声出したりニヤついた表情などご法度です。あくまでも上品に振舞いながら己の中の変態的欲望を満たすことが大事です。
内容が内容だし主人公が主人公ですから、周りの男性キャラはみんな相当な苦労を強いられます。主人公のとんでも発言に全く取り乱さず対応してくれる男性ばかりで主人公がどれだけ恵まれているのかを思い知らざるを得ません。いくら性欲旺盛な男性でも女性にこんなのやあんなのを聞かれたらドン引きしますよ。本当、男性キャラの皆さんリスペクトしかありません。主人公の環境、本当性的に恵まれすぎ。
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2024年01月16日
本作を強いて分類するなら「女性向けの謀略劇」でしょうか? 国際政治の裏で主人公が色々と頑張ったり巻き込まれたりする物語です。その過程で色んな男性と縁を結び、助け助けられながら何とか凌いでいくって感じですね。ぶっちゃけ、恋愛要素はただのおまけです。とは言え、「女性向けの謀略劇」としては立派でも「謀略劇」としては物足りないです。
主人公が身体の線から力を感じ取れない女性なのもありますが、大体主人公の性格自体が良い子すぎて政治には向いていません。カリスマ性が全く期待できないんです。作中での地位は剣聖なのに、国を代表する武家の娘で軍人であるはずなのに、全く武人らしいところがありません。場を和ませる外交官くらいは務めても軍人は到底無理です。これは少なからず恋愛要素を入れたから発生した弊害だと思います。
その結果、地位とキャラが全く噛み合わない主人公がストーリーを引っ張っていてあちこちで周りのキャラクターたちが苦労を強いられます。中には百戦錬磨の軍人に「戦場に立っても人を斬ることのないあなたには私の心など分かるまい」って言われる場面もあります。ぶっちゃけ主人公は軍人としてはお飾りでしかありません。こんな娘にそんな地位を任せて本当にこの国は大丈夫なのか、って心配になるくらいです。
なので、ストーリーを引っ張る本来主人公の務めるべき役目はルートごとに恋人になる男性キャラクターが務めます。と言っても、その男性キャラクターたちも典型的な「女性作家が書いた男性キャラ」って感じで外見は男でも中身は女って感じで謀略劇特有の非情さが足りません。色々話は進んでいくのに切れ味が悪く、決め切れてないって印象ですね。何もかもが上品すぎて謀略劇としての味が物足りないんです。
話自体は作り込んでいるので、少女漫画に慣れていて少し政治を混ぜた話が読みたい方にはお勧めできますが、本格的な謀略劇が好きな方にはお勧めできませんね。
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2024年01月06日
責任感あって、専門知識が豊富で、困った時にちゃんと導いてくれて、ペットの意思をちゃんと尊重してくれる…そういう理想のご主人様との馴れ初めを描く作品です。よくも悪くも男性キャラクターの「紳士さ」が目立つ作品で、よくオタク男子たちが自分たちのことを自嘲的に言う「変態という名の紳士」という概念から「変態さ」を第二次性設定で器用に抜き取ったって感じです。プレイ自体は少し変態っぽい、少なくとも性欲旺盛なところが見えますが男性向け作品に出てくる「不潔で気色悪い変態感」が全くおらず、あくまでも相手の意思を尊重した上で相手との関係を深めるために行う行為としての性愛に徹底してます。この態度の違いが結構大きくて、行為自体は変態感があるけど全く変態に感じられません。世の中の男子に「これこそ正しい性欲の発散法で正しい女の子の扱い方」って聞かせてあげたいですね。
ただし、医師という専門職に就いているから目立たないものの、右京先生本人の性格はかなり女々しく、メンタルが弱い感があります。そういう男性像が好みの方には問題ないと思いますが、もっと強い男性像を理想とする人は少し失望するかもです。良くも悪くも礼儀正しい紳士である故の欠点ですね。医者という地位が上手く隠してくれているんですが、こういうのに拘りがあり、つい察知してしまう方にはお勧めし難いかもです。
レビュアーが選んだジャンル
2024年01月05日
前編の込んでいた設定が現代社会に転移しちまって全部無駄になりましたが、その分、前編の時より二人の関係性により集中できる物語になっています。前編の時は異世界の文明の設定とか結構あるのにいつ使うのか気になっていてメインである二人の関係性のことにそこまで集中できなかったんですが、本作では現代社会だから思いっきり終始一貫二人の関係に没入できます。
内容がストレートすぎて展開が見え見えって感もありますが、その見え見えの展開が作者さんの美麗な作画と巧みな演出で美しく描かれます。展開が見え見えでも面白い作品を描くことができる作家さんは貴重なので前編のファンでしたら問題なく楽しめると思います。
男キャラクターの性格も前編では「会ったばかりなのにこんなに?!」って感じがありましたけど本作では結構仲が深まった後なので心理描写において不自然な点はございませんでした。まぁ、あくまで本作限りの話ですけど。(笑)
作画と演出に拘りのある方に特にお勧めします。
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2024年01月05日