『Cocktail』シリーズの初作から、長谷部を演じた声優さんが代わっています。CVの熊田さんは、こういった作品の代役という位置の意味を理解し、前作のイメージを損なうことを極力避け、それでいて今作のストーリーに添った「長谷部泰孝」を演じられているのではないかと感じました。私自身、前作にはとても思い入れがあるのですが、自然に受け入れることができました。
『ブラックルシアン』で公安捜査官だったヒロインを手に入れ、『ダーティマザー』で彼女のかつての教官であり、麻取に移籍した桐島に奪い取られます。
感情の起伏、というか、感情そのものがあまり感じられなかった長谷部が、ヒロインを自分の手元におくことを選び、一旦は彼女を桐島に奪われるけれど全身全霊を賭けて取り返すことによって、だんだん人としての何かを得て(取り戻して)いく。最後の方でそういう言葉も出てきますが、ヒロインも長谷部とともに生きる道を選んだことで得られるものがあり、この先ふたりの醸していくであろう、幸せの発露が垣間見えるラストは本当に良かったです。
シリーズ前2作は催眠音声作品でしたが、今作はシチュエーション作品となり、逃走シーン、カーチェイス、銃撃シーンなど聴き応えのある構成が圧巻です。長谷部と桐島が初めて直接対峙し、お互いの思いをぶつけ合うシーンが素晴らしかった。正直そこから「えっ?!そういう展開でこう終わる?!」と思わないでもなかったですが、バッドエンドの暗すぎる未来をもたらす桐島との差異があるからこそ、そこが引き立つのでしょう。
このレビューを書いた時点で『アグラベーション』の予告も発表されています。こちらは桐島サイドのストーリーなので、今作とは違ったエンディングを迎えることとなるわけで…もう、最大値の期待感しかありません。全編通して聴けるように、ここまでの3作品に未聴がある方はぜひ!聴いて下さい!
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