■あらすじ
断熱扉が閉まると、嵐の音は消えた。岩の洞は、しんと八度。チーズの匂いと、囲炉裏もないのに妙にあたたかい、人ひとりぶんの体温。「温度が動くから扉は開けない」。嵐はもう、過ぎている気がした。
麓のオーベルジュの仕入れ係として、山中の熟成洞へ初めてチーズを受け取りに上がった。熟成士の澄人さん、三十三歳。岩をくり抜いた洞の奥で、何百輪ものチーズを磨いて暮らしている人。受け渡しの途中で外は春の嵐になり、あたしは洞へ入れられた。その晩、彼は八度の廊下の重い断熱扉を静かに閉めた。『温度が動くから扉は開けない』。洞の中は一年じゅう八度。チーズは温度がひと揺れするだけで熟れ方が変わるから、嵐の間は誰も出入りしない――そう言いながら、嵐が過ぎたはずの音になっても、彼は扉に手を掛けない。指先が冷えるたび、彼はあたしの手を自分の首筋に当てて温める。冷たい岩室で体温だけが熱くて、寝台でも、石の棚の間でも、毎晩。冷えと熱の順番が、いつのまにか身体の中で入れ替わっていく。出荷の朝、扉は外へ向かって開いた。眩しい雪解けの山道をトラックが上がってくる。あたしは荷台に乗らずに奥の棚へ戻って、今日の分の若いチーズをひとつずつ裏返した。
麓のオーベルジュの仕入れ係として、山中の熟成洞へ初めてチーズを受け取りに上がった。熟成士の澄人さん、三十三歳。岩をくり抜いた洞の奥で、何百輪ものチーズを磨いて暮らしている人。受け渡しの途中で外は春の嵐になり、あたしは洞へ入れられた。その晩、彼は八度の廊下の重い断熱扉を静かに閉めた。『温度が動くから扉は開けない』。洞の中は一年じゅう八度。チーズは温度がひと揺れするだけで熟れ方が変わるから、嵐の間は誰も出入りしない――そう言いながら、嵐が過ぎたはずの音になっても、彼は扉に手を掛けない。指先が冷えるたび、彼はあたしの手を自分の首筋に当てて温める。冷たい岩室で体温だけが熱くて、寝台でも、石の棚の間でも、毎晩。冷えと熱の順番が、いつのまにか身体の中で入れ替わっていく。出荷の朝、扉は外へ向かって開いた。眩しい雪解けの山道をトラックが上がってくる。あたしは荷台に乗らずに奥の棚へ戻って、今日の分の若いチーズをひとつずつ裏返した。
■ジャンル
執着/溺愛/中出し/年上攻め/年の差/焦らし/連続絶頂/立ちバック
■登場人物
■波多野 ちとせ(はたの ちとせ)/25歳――ヒロイン・視点人物。麓のオーベルジュの仕入れ係。寒がりで、手先がすぐ冷える。
■高遠 澄人(たかとお すみと)/33歳――岩の熟成洞でチーズを磨いて暮らす熟成士。口数が少なく、輪を指の背で叩くだけで熟れ具合が分かる。
ふたりとも18歳を超えた成人。
■高遠 澄人(たかとお すみと)/33歳――岩の熟成洞でチーズを磨いて暮らす熟成士。口数が少なく、輪を指の背で叩くだけで熟れ具合が分かる。
ふたりとも18歳を超えた成人。
■ページ数
全51ページ
■ご注意
・本作はR18(成人向け)作品です。18歳未満の方のご購入・閲覧はご遠慮ください。
・本作のサムネイルは、生成AIを使用して制作したものに
一部手作業の調整を加えています。
・登場人物・団体・場所はすべて架空のものであり、
実在のいかなる人物・団体・場所とも関係ありません。
・本作は山中の熟成洞という閉ざされた場での関係を題材とするフィクションであり、現実のいかなる強要・犯罪・迷惑行為も肯定するものではありません。描かれる性行為はすべて成人(18歳以上)の合意にもとづきます。
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一部手作業の調整を加えています。
・登場人物・団体・場所はすべて架空のものであり、
実在のいかなる人物・団体・場所とも関係ありません。
・本作は山中の熟成洞という閉ざされた場での関係を題材とするフィクションであり、現実のいかなる強要・犯罪・迷惑行為も肯定するものではありません。描かれる性行為はすべて成人(18歳以上)の合意にもとづきます。










