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「声が変ですみません」——三十年間、自分の声を殺して生きてきた男が、声楽家の隣で眠る夜に、すべてを暴かれる。
図書館司書の律は、不眠症の治療として始めた「添い寝契約」で、声楽家・瀬川奏太と毎週土曜の夜を過ごしていた。身体の接触はしない約束。ただ隣で眠るだけ。——それなのに、眠りの中の律は正直だった。寝返りで額を押しつけ、寝言で彼の名を呼び、起きている間は決して出さない「本当の声」を漏らしてしまう。
奏太は声楽家だ。声の専門家。寝息に混じる倍音の秘密も、喉を締めて作った低い声の嘘も、五週間の夜を重ねるうちにすべて聴き取っていた。そして六度目の土曜の夜、契約の終了を切り出した律に、奏太は告げる。「あんたの本当の声を、全部、俺に聴かせろ」と。
深夜の音大、防音練習室。ピアノの和音に導かれ、律の喉から解き放たれる声。三十年間封じてきた、高くて甘い、どこにも分類できない声。そして声と一緒に曝け出される身体の秘密——。
「声」という繊細なモチーフを軸に、隠してきた自分を丸ごと受け入れられる歓びと、身体の芯まで響く官能が交差する。声楽家の低音が鼓膜を震わせ、防音室の静寂が二人だけの世界を閉じ込める。声で愛し、声で暴き、声で赦す——五感のすべてを「聴覚」に集約した、新感覚のBL官能小説。
文字数はハート、濁点など込みで約18103字ほど。
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