イルリキウムさんのレビュー一覧

「あおぎりレンタルVTuberサービス」シリーズの第4弾は、満を持しての魂子さんでした。
配信者として、音声作品声優として、キャリアのある彼女ですから、安心して聴いていられる仕上がりです。

これまでの3作品と展開はほぼ同じですが、少なくとも私にとって、今回はやや"薄味"という印象を受けました。
言い換えれば、「推しがファンの家に来てからの数日間」というシチュエーションで書かれた物語として、至って"基礎的"であった、と。

魂子さんの可愛らしさ、悪戯っぽさ、いじらしさ、友達感に恋人感……。
これら全てを味わえる、至高の音声作品であることは確かなのですが、
冷静になれば、少し主人公が良い思いをしすぎている気がします。
(※夢音声なのだから冷静になって聴いてはダメですね)

もちろん、第1弾が際立ってセンセーショナルであったことも影響しているでしょう。
あのシナリオに比べれば、精神的な揺さぶりは軽度であると言えます。

ただ、魂子さん激推しのあなた。あなたにとっては注意が必要です。
初めは人見知りでぽそぽそと話していた彼女が、
本当に友達かと思うくらいのトーンで話しかけてくれるようになり、
魂子さんお得意の「アレ」も膝枕でやってくれ、
あなたとの時間が、あなたという存在が、
魂子さんにとって重要なものになっていく過程を、自身で体験することになるのです。
気を強く持たなければ、逆に持っていかれます。

聴いたが最後、事ある毎に魂子さんが自分の前で「普通の女の子」だったことを思い出してしまうという、不可逆の呪いがかかる。
一度は"薄味"と申し上げましたが、やはりこのシリーズ、ただじゃ済みません……。

「あおぎりレンタルVTuberサービス」シリーズ、第3弾。
第1弾・我部先と、第2弾・音玄さんとのリリース間隔が2ヶ月だったことを思えば、
今回1ヶ月足らずで次弾が撃ち込まれたのは嬉しい誤算だったと言えましょう。

こまるさんは、女の子らしい可愛らしさやセクシーさを、
ある種「打算」でアピールすることを躊躇わない人物である、という印象があります。
それはあくまで配信から受けるイメージで、かつこれまでの2人に比べれば、という話ですが。
そんな彼女が、1対1でまろん組にサービスを提供する段になったとき、
果たしてサービスの仮面をどこまで剥いで接してくれるのか……。
これは紛れもなく、注目すべきポイントのひとつでしょう。

個人的には、第1, 2弾にあったような、心を千々に乱される展開をどうしても期待してしまったので、
今回はさほどでは無かったことに若干の物足りなさを感じてしまいました。
一方で、こまるさんに"江戸"を求めている視聴者にとっては、
ラッキースケベ的要素も盛り込まれた本作に満足するはずです。

とはいえ、これがこまるさんのリアルなのだと提示されると、得心のいくことに気付きます。
特にChap.9のトークは、我部先や音玄さんとは、かなり趣が違う。
こまるさんの、「まろん組に差異をつけない」という意識が前面に出たあのトーク運びに対しては、
主人公くんの気持ちに移入するだけでグッとこみ上げるものがありました。

ここまでの3作を聴いて、シナリオライターの八神氏は、
リスナーに残す"感情の余韻"を大切にしていると感じます。
もし、こまるさんから本シリーズに入った方がいらっしゃるならば、
第1, 2弾も聴いていただきたいと切に願います。

うあ～～～～～～
しばらく天を仰いで唸ってしまいましたね……

「あおぎりレンタルVTuberサービス」シリーズの第2弾。
不意打ちのように登場したのは私の最推し・山黒音玄さんでした。

サービス当選者=主人公くんの自宅にやってくる音玄さん。
ある意味我々玄人(くろんちゅ;FN)の想像を裏切らず、しっかりとATフィールドを張った状態で、ある程度の距離感を保っています。
他方、主人公くんは主人公くんで、音玄さんに決して嫌な思いをさせまいと、控えめな要求をするばかり。
そんな彼に音玄さんは、少しずつ不安を抱いていき、僅かな不満を持ったままサービス日を終えます。
しかし……。

トラック名を見ればお分かりの通り、Chap.5「8月25日」は2人が出会った数日後。
ここからの展開が! もう! たまんない!
2人の織りなす不器用ったらない関係! 心臓を雑巾絞りされていく!!
シナリオを担当したのは第1弾から引き続いて八神颯氏。
ただのあまあまシチュにはさせない、もどかしい人間模様を描き出す筆致は、ぜひぜひ一聴いただきたい。

正直申し上げて、玄人からすると
「音玄さん、こんなこと言うかな?」みたいなことを思う瞬間が無いわけではないです。
ただ、それがまたリアルさに拍車を掛けるのです。
なぜなら、"本当の"音玄さんを、我々リスナーは知らない。
本当はこうかもしれない。そう思った瞬間、あなたはもう作品世界の中にいます。
これを単なる音声作品と割り切って聴くには、私は音玄さんのことを好きすぎました。
あおぎりを少しでも知っているなら、聴かないという選択肢は無いと思います。

音玄さんの演技で最も驚いたのは配信シーン。
トークのテンポが普段の配信にとても近かった。台本があったとしたら、あの自然さを出せる音玄さんには、脱帽です。

うん、分かるよ主人公くん、声が聴けるだけで嬉しいもんな……。

湖畔の隠れ家的旅館で、魂子さんによる癒しフルコースを堪能することができる本作。
音声を聴きながら、部屋の布団に寝転ぶと、まるで本当に旅行へ来たかのような心の解放を覚えます。
旅行先ではひとりになりたいというあなたでも、
落ち着いた声のトーンと柔らかい雰囲気を纏った、こんな魂子さんなら、
居室に長居してほしいと思ってしまうこと請け合いです。

確かに、あおぎり高校をご存知の方は、その"校風"に比べるとあまりに健全だと感じられる内容でしょう。私もそう思います。
でも、よく考えてみると、
「ひと気のない旅館で、高校生の仲居さんが、背中を流してくれたり添い寝をしてくれたりする」
なんてこと、現実世界にあります?
そう、無いんですね。健全って何でしょう(宇宙猫)

ただ翻って、癒し系耳かきボイス業界では、これは教科書的な作風といえそうです。
水音がリアルな洗体・オイルマッサージ・膝枕耳かき・添い寝……。
そして、「一期一会の切なさ」のようなものも、存分に感じられるシナリオでした。
個人的には、耳かきパートの耳ふーが有声の「ふー」だったのが最高!

言ってみればスターターキット。
もしかしたら、この旅館は、癒し系ASMR沼のほとりにあるのかもしれません。

脳が破壊されました。

声優さんが役柄を演じる一般の音声作品とは異なり、本作は「あおぎり高校所属のVTuberとしての我部りえる」がそのまま登場します。
我々下僕たちのよく知る我部ちゃんが、時にモニターを通じた配信で、時に目の前で自分だけのために、話しかけてくれるのです。

囁き、吐息もさることながら、マンツーマンで喋っているときの落ち着いた声のトーンは必聴!
まさに、いま我部ちゃんと会話している自分だけが味わえる、彼女の姿……。
「レンタルサービスなんだ、仕事でやってるんだ」と自らに言い聞かせても、我部ちゃんの言葉が、挙動が、それを否定してきます。
我部ちゃんの一言一言の表現力に驚かされ、作品への没入感、いや、我部ちゃんの顕現感が強まっていく。
これは夢小説ならぬ、夢音声かもしれません。

シナリオはきっちり一人称視点のみで進み、我部ちゃんがひとりでいるときの台詞などはありません。
我部ちゃんの声と僅かなSE、そしてトラック名の日時。
これらだけが、逆説的に、克明な状況を説明しています。
「1日レンタルなのに、9/29～10/9まであるのはなんでだろう?」と思ったそこのあなた。
そこがキモです! ぜひタイムスケジュールを念頭に聴いて、精神をぐちゃぐちゃにされてください。
忘れられない体験になります。

私はChap.3,4,8でボロボロ泣かされました……。急に敬語になるのはズルいのよ……

私は、Project E.L.Cさんの「姉妹の掟」という作品が、そしてその作品での小日向さくらさんが、それはもう大好物でして。

似たような響きを追い求めて、辿り着いたのがここです。

小日向さん演じる女性店員の、壁を作らない接し方、口振り。
ぱきっとした明るい声に聴き惚れて……、気付くと、彼女の敬語が外れている。「君」って呼んできてる。
しかし決してお調子乗りではない。彼女のフランクな態度が、こちらの安心を誘う。
頬を赤らめた「えへへへっ」。ジト目で訝しむ「えぇーっ……?」。満面の笑顔で「好き!」。
全てが自然な感情の表出。打算が無い。
ふとした瞬間に照れたり、虚を突かれて慌てたりと忙しない様子は、ずっと一緒にいたいと感じさせる。

……これは、恋では?

逆に、耳かきに集中したい方にとっては、話しかけすぎと感じてしまうかも。
音のジャンルは綿棒でごそごそ、軽くオイルぬりぬり、といったところでしょうか。
雑味のある、圧が強めの音がお好きな方。ご満足請け合いです。

私が音フェチに目覚めて、もう久しいわけですが。
今や、耳かき作品は追いかけきれないほどに増えました。
たくさんの愛好家が、様々な手段で作品を世に送り出しています。

とみみ庵さんも、動画共有サイトなどにUPしている作品は多数あります。
しかし敢えて、値段を付けて売り出したものが、これだけの評価を得ている。

とみみ庵さんの音への情熱と、台本を自分のものとして独特の長閑な空気を作り出す浅見さんが揃ってはじめて、なせる業です。
ゴールデン・コンビと言っても差し支えないでしょう。

癒しは全身で感じるものです。
聴覚のみで癒しを届ける……、尊い営みじゃあありませんか。

購入して1年以上経ちます。しかしまったく飽きが来ない。
音フェチ音声/ASMRの初心者から玄人さんまで、座右に置いてほしい作品ですね。

聴かせる音の順番や長さなど、全てが計算されているようです。
ドライな音、ウェットな音、クリアな音、ノイズィな音……、好みは十人十色でしょうが、好きな音はより好きになって、今まで意識してこなかった音にも新たな発見があること必至。

音を際立たせる、かの仔さんのサイエンティストぶりも見事です。
大好きな声優さんのひとりですが、普段より数段ピッチの低い声で、新境地を見た気がしました。
プラトニックに音を感じるための水先案内人として、素晴らしい役目を果たしてくれています。
キュートなかの仔さんしか聴いたことがない方にも、おすすめできますよ。

いつ聴いても安心できる、語るならこれだけは外せない、そんな音声作品です。
多くの同志に声を合わせて、続編を期待っ!

そうでしょう?
「そんなに耳かきが好きなら、女の子を集めて、この技術指導を聞かせなさい」ってことでしょう?

私のように、店のオーナーになりたいと目覚める人もいるはずです。
逆に、客の視点としては、「常連の女の子にこんな風な教材に使ってほしい!」と思うかもしれません。
いわゆる"新人研修コース"と同じで、自分がケアされることが、お店の子のためにもなるってわけです。なんとwin-winな!
そして、単純に耳かきのスキルアップ教材としても面白い。

素晴らしい着眼点です、JONさん。

更に、原典72分、そして42分、28分、10分のカット版も準備されているなんて、顧客心理がよく分かっています。

早いところ、近くに「愛喰」「舌鉋」を備えたお店がオープンしてほしいものです。
あっ、自分が開けばいいんでしたねー。女の子集まるかなあ。

私がこの作品を購入したのは、発売から3年半後のこと。
恥ずかしながら、初めて秋葉さんの声をしっかりお聴きしました。

……気付くと、頭を垂れていました。
沈みゆく夕日の方角に、深々と。
今まで知らなくてごめんなさい、の思いしかありません。

ゆとりあるテンポで、大人の落ち着きを感じさせる喋りです。語尾が無駄に伸びておらず、むしろハキハキしています。
そして、たまに舌足らずになる部分がとても可愛い!
「ふふふっ」という声は自然で、微笑んだ顔が目の前に浮かぶようです。

秋葉さんの声と喋り方に完全にやられた私の耳を、最後は耳舐めが襲います。
……たまらん。

どハマりしてしまいました。
ハマったが最後、抜け出せない耳かき音声のアガルタ。みなさんも私の二の舞を演じちゃってください。