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正直この作品をクリアした直後は、緻密に書き上げられた世界観の割には期待はずれな内容だと感じた。
というのも本作は、風爛症に関する私宅看護法を改正しようと奔走する千種正光と、エリート学生の天間武雄らが風爛症を撲滅したり、私宅看護法を改正したりするまでの道程を描いた話ではなかったからだ。
二人の主人公による、二つの視点から描かれる物語が、最終的に繋がっていき、運命を変えていくといったような、大きな盛り上がりを見せるストーリーではないのだ。
本作はあくまでも、風爛症と立ち向かう医師(千種正光)と、最愛の人が風爛症になってしまった学生(天間武雄)という個人に焦点を当てた物語であることがこの作品の魅力なのだと感じた。
そういった意味では、私のように期待外れだと感じてしまった人もいるかもしれない。だが、シナリオを描いた瀬戸口廉也氏のファンや、作者が本作で描きたいことが理解できた人なら、この作品の良さがしみじみと伝わってくるのではないか。
本作のように奇怪な病とそれに伴う差別や人心荒廃を描いたディープな世界観を用いれば、もっと面白い作品をつくれる人はたくさんいると思う。しかし、本作はあくまで個人に焦点を当てた作品であり、そういった視点でしか感じることのできない愛を体感できる優れた作品なのではないだろうか。