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【IF】ブリキ先生はゼンマイで動く ~雪の女王編~

  • 【IF】ブリキ先生はゼンマイで動く ~雪の女王編~ [yumemithukisuguru]
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【IF】ブリキ先生はゼンマイで動く ~雪の女王編~ [yumemithukisuguru]
Nama Circle yumemithukisuguru
Tanggal rilis 25/10/2022
Nama seri ブリキ先生はゼンマイで動く
Batas usia
Semua umur
Format Karya
Format file
PDF
/ WAV
Bahasa yang didukung
Jumlah halaman 61
Genre
Ukuran file
407,08MB

Konten Karya

冒頭部分の紹介

音声読み上げファイル同梱  CV:さとうささら(CeVIO)
61ページ(400字原稿用紙概算84ページ約33500文字)

【IF】ブリキ先生はゼンマイで動く
               ~雪の女王編~



7月の吹雪

 いつもの変わり映えしないアーケード街。娯楽と言えば銭湯と卓球くらい。私のクラスには天使くんと呼ばれている男の子がいる。名字が天塚で、天使くんだ。地味子だった時の私が変わるきっかけを作った男の子だ。地味で成績が良いという理由で、クラスの委員長という名の雑用係をやらされて、たくさんの書類を手に持って歩き、廊下で転んで散らばってしまったのだ。
「大丈夫?落としたよ」
その時拾ってくれたのが天塚くんだった。心配そうに私の顔を覗き込む。マジ天使。助かる。丁寧に全部拾ってくれて、
書類を一緒に運ぶ時間が永遠に続いて欲しい。運び終えると、じゃねと満面の笑みを私にしてくれて、去って行った。
私、変わらないと。まず眼鏡をやめてコンタクトに。三つ編みもやめよう。

 「その青いハンカチは?」
「れ、蓮ちゃん」
だめよ。そんないいかたしちゃ。天使くん困ってるじゃないの。
「ちょっと鼻血でちゃって。その時日野先生にハンカチ貰ったんだけど、やっぱり悪いから新しいの買いに来たんだ」
日野先生。新任の先生だ、車椅子に乗っている。たしか、
道徳の授業を受け持つ、って言っていたわね。
「幸せを運んできそうなハンカチね。いいと思うわ」
我ながら、変なことを言っているな。
「よ、よかった。僕、女の人に何かをあげる事なくって、そう言ってもらえると、自信が湧いてきたよ」
私たちは雑貨屋を出ると、広場の噴水の前にあるベンチに座った。会話の内容は全然頭に入らない。うれしすぎて。
彼、天塚海魚くんは、変わった名前をしていて、海魚と書いて、みお、と読むのだ。私の事を蓮ちゃんと呼んでくれるのもポイント高い。


 吹き抜ける風の強い音が聞こえる。なにか様子が変だ。
広場の天井になにか白いものがどんどん張り付いていく。
「雪?」
天井を観察すると、それが雪だということが分かった。
「雪が降ってる?でも今は7月だよ?」
私たちは、アーケード街の北口へと見に行った。やはり雪が降っている。それもただの雪では無く、吹雪だ。呆然と見ているウチに、どんどん強くなっていく。
「さ、寒い」
「そうだ、ねぇこっちに来て」
私は、海魚くんの手を引っ張った。
「銭湯?」
「そう、銭湯は温泉が湧いていて温かいから」
温泉は足元にも流れている。足湯用の湯だ。いったい何が起こっているのだろう。私たちが足湯に浸かっていると、ラジオでニュースが流れる。
「ニュース速報。突然の吹雪に原因を調査中。付近の皆さんは、家で待機していて下さい。また、避難が必要な方は、アーケード街へとお越し下さい」
「なんだか大変な事になっているわね。どうしたのかしら」
「雪男がかき氷を食べるために雪を降らしているのかも」
「今時雪男は流行らないわ。きっと雪の女王が我が儘しているのだわ。雪の彫刻が見たいとか言って」
足湯に浸かりながらそんな話をしてすごしていると、またラジオでニュース速報が流れて来た。吹雪が止まず、避難が始まっているらしい。
「あれ、パパどうしたの?」
「おお、蓮か。地下の避難所を開けようと思ってな」
パパはアーケード街の会長だ。銭湯には地下への入り口がある。温泉のパイプラインを管理する地下道なのだけれど、
そのほかに避難所や、災害時の備蓄も保管されている。
「そんなに大事になっているの?」
「そうだ、これ以上悪くならないといいんだが」
避難してきた人たちが、とりあえず足湯で温まると、
地下道へと移動していった。地下は温泉が流れているので温かいのだ。
「そうだ、海魚くん家に電話しないと。
すっかり忘れていたわ」
天使くんは動揺していて、気付かなかったようだ。これは事件ね。指をくわえて待ってないで、私たちで行動して解決しないと。こんな突然吹雪になるなんて、絶対おかしいわ。
私、心当たりがあるのよね。

調査開始

  「電話、どうだった?」
銭湯の受付には公衆電話がある。天使くんは家に電話するのだった。TVゲームならば、セーブポイントね。
「うん、近所の人と一緒にこっちの方へ避難するって」
「よし、まずは防寒着ね。私の家に来なさい」
「えっ、じっとしてるんじゃないの?」
私は、天使くんの手を引っ張って家へと向かった。
「じっとしてたって、なにも始まらないわ。行動しないと」
「でも、こういうのって、動くとだいたいひどい目に遭うでしょ。外国の映画でみたもん」
「あれは映画よ。これは現実なの。どのみち何か起こるわ」

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