くもながさんのレビュー一覧

本作は”二次創作的な視点で鑑賞すること”が推奨され、解釈の余地や方向性が広くユーザーに委ねられています。
私は、スズ→佐野の片想い要素を含むコメディ寄りの作品として鑑賞しました。
スズは「男女共に来る者拒まず去る者追わず」な気質で、作中でも”相手の求めに寄り添った”結果として複数の女性との性的関係が示されます。
そんなスズが珍しく自分から追い求めるのが、「一生懸命なクソガール」佐野。
全くの異性愛者であることに加え、ラブコメ主人公の素質(難聴・健忘・好意に無頓着の三大傾向)を併せ持った、とにかくつよくて(百合的に)難攻不落の女。これが二次創作フィルターをかけた、私の佐野像です。
あくまでスズを「お友達」として求めているため、”求めに寄り添っ”ても想いを成就できず、アプローチの数々も意図が伝わらないか聴こえていない。でも”そんな佐野が好き”。という、くっつかない系ラブコメの様式美が味わえます。
そんな二人を取り巻く、お店のママである綾とスズの元カノ?な花音の仕事ぶりも光ります。
綾はスズの性愛事情に通じているため、トラック8・9での奔走振りは正にコメディ。また、自身もスズとワンナイト(?)の関係を持っているため、ママとしての距離感や気遣いの中に、佐野や花音へのきまり悪さやスズに対する消化不良な想いを読み込んで泥沼多角関係に思いを馳せるのも二次創作の醍醐味かと。
花音については、過去の女としての役割を完璧に体現しています。今カノ?への嫉妬とマウントからの真っ直ぐさに胸を打たれて仲良しへ、の流れ。この潮流を花音→佐野へと盛り立てるのも、また二次創作の理ではないでしょうか。

気になる点として、異性愛主義的価値観や男性上位的社会規範を前提にした台詞が複数あり、水を差されたように感じることもあるかもしれません。そのまま受け止めるのが難しい場合は、二次創作のフィルターで濾すことも一つの鑑賞法かもしれません

カタリリオのお三方、スタッフ及び関係者の皆様、処女作『ランドリー』、発売おめでとうございます。

早速拝聴いたしました。


季節の移り変わりとヴァイオリンの調べに乗って、流れゆく二人の日々。

物語が進行するにつれ、散りばめられた複線や対比関係が、呼応し、連なり、回収されていく。

真紀菜と恵恋の心も身体もぶつかり合うような交流、二人を取り巻く人々と一匹のファインプレーの数々。

時にはフランクにじゃれ合い、時にはシリアスにもがきあがくリアリティ。

緻密に組み上げられた設定や演出と、思いや思惑が交錯する人間ドラマを堪能いたしました。


大変素敵な作品を生み出された皆様、本当にありがとうございます。