一陣の光的鑒賞一覽

ありふれた日常風景に、視点を変えたエッセンス
を加えると、な”つっつ”先生の表題作・第1話～
第14話までを収録した、一巻目。
印象的な収録作品は、二年目の学生生活に刺激を
求めていた”大根将太(おおねしょうた)”は、同じ
クラスの女子生徒、”音姫いちご”の秘密を知って、
な第一話「いちごの秘密」。
読んでいて印象的だったのは、それぞれの登場人
物・主観なサイドストーリーを盛り込んでいる点。
このことで、より深く、そのお話を理解させやす
くしていました。また、何気に相手のことを思い
やる”将太”が、結構、いい奴です。”いちご”を含
めて三人が「おむじょ」って、日常の中の非日常
を強く意識させる、”つっつ”先生の、強力な一冊。

登場する女性が、人妻または元人妻で、くくら
れている、”東タイラ”先生の、2017年に雑誌ビ
タマンへ掲載された短篇七本が、収録された作
品集。
印象的な収録作品は、七年前、学生結婚だった
妻から、一方的に別れを告げられて、離婚した
”武井学”は再会した元妻”小谷桃子”に・・・な
「元妻の胸を揉んでいいですか?」。
読んでいて感じたのは、少しだけ複雑な人間関
係を盛り込んだ、そのストーリー。硬質で、さ
っぱりした絵柄で描かれていているので、軽快
に読むことができました。読後感も良好な一冊。

ぼん・きゅ・ぼん、な女体描写が記憶に残る
”朝森瑞季”先生の、雑誌ビタマンへ2016～17
年に掲載された、短篇七本が収録された作品
集。
印象的な収録作品は、堅物ゆえ、そっち方面
はてんで無知なOLの”伊勢さん”。とあるきっ
かけから、同僚の”芝くん”と一緒に食事する
ことに・・・な「伊勢さんはシりたい」。他
の事柄については博識なのに、そっち方面の
知識が、すっぽり抜け落ちている、未経験な
”伊勢さん”が愛らしい、お話でした。
読んでいて感じたのは、ダイナマイトボディ
と愛らしい表情のギャップ。掲載誌の関係で
詳細な描き込みはありませんが、逆にソフト
な描写から想像をかき立てるモノがありまし
た。
骨太な筋書き・構成と、美麗な絵柄が魅力の
”朝森瑞季”先生、ぼん・きゅ・ぼん、な一冊。

妹登場で、一気ににぎやかな印象になった
”クール教信者”先生の、おじょ29～43迄
を収録した表題作の三巻目。
印象的な収録作品は、下の名前で呼び合う
二人が初々しい、おじょ29。
読んでいて感じたのは、海外暮らしから帰
ってきた妹”地獄巡秋”が、姉の”地獄巡春”
にむける、少し屈折した姉妹愛。独り占め
したい欲求が、屈折した行動をとらせてし
まう、姉と似た者同士な彼女が印象的でし
た。
”春”と”徒然”、親密度の濃くなる関係性が
表紙で表現された、にぎやかな展開の一冊。

ありのままの姿を受け入れてくれるひとと
出会えたら、と考える、”クール教信者”先
生・おじょ 16～28.5までを収録した表題
作の二巻目。
印象的な収録作品は、内心、重々理解して
いながらも、行動に出てしまう、その後ろ
暗さに・・・な、おじょ20.5。”地獄巡春”
の告白的体験談を、受け止め、聞き入って
いる”川柳徒然”が印象的な、お話でした。
読んでいて感じたのは、素の自分を受け入
れてくれる相手と出会ったら、その相手に
より、理解してもらおうと行動する、本能
的な動きを丁寧に作品へと盛り込んでいる
ところ。ラブコメの形態をとってはいます
が、人格論な側面も描いている様に、読ん
でいて思いました。少しづつ狭まる、二人
の関係性を描いた表紙が記憶に残る、一冊。

表紙を見ただけで、二人の関係性がしっかりと
理解できる”クール教信者”先生、おじょ 44～
58.5までが収められた、表題作四巻目(最終巻)。
印象的な収録作品は、”川柳徒然”の素直で真っ
直ぐな宣言が心に残る、おじょ57。
読んでいて印象的だったのは、相手を思いやる
”川柳徒然”と”地獄巡春”、二人の関係性。突然、
殺気立つ、”クール教信者”先生ならでは、な世
界観の中で、想いを大切に育む二人が、読者に
特異な読後感を残しています。周りに翻弄され
ながらも、着地点へと到達した感、のある一冊。

郷愁誘う、素朴な絵柄とストーリーが”あきなお”
先生ならでは、な世界観を確立している、短篇七
本が収められた作品集。
印象的な収録作品は、愛猫を失い、心の傷を癒し
に来た”太一君”。実家が民宿をしている”美弥”ち
ゃんと出逢って・・・・な「とある島で・・・」。
初めてなのに凄く積極的な”美弥”ちゃんをみてい
て気持ちが和ぎ、童貞な”太一君”と初体験へ至る、
二人を開放的に描いた、お話でした。
読んでいて印象的だったのは、各作品の終わりに、
後日談的2コマ漫画が差し込まれていた点。さり
げない気配りに”あきなお”先生の人柄を感じさせ
てくれます。開放的で明るい未来を想起させる事
で、妊娠エンドの空気感が綺麗に払拭された一冊。

秘めている”想い”が溢れ出る海ちゃんが可愛い、
”剣持ちよ”先生の表題作・第十話から第十八話
が収録された、二巻目。
印象的な収録作品は、”おじさん”が営む民宿の
お客さん第一号の美咲さん。空腹な彼女が出か
けた先の喫茶店で、海ちゃんとバッタリ・・な
「第十一話　過去とコイバナ」。
読んでいて印象的だったのは、すくすくと育つ
”おじさん”への想いが、こぼれる様に溢れ出る
海ちゃんの姿。彼女の、抑えられない”想い”が、
繊細に描かれていました。純粋で真っ直ぐな海
ちゃんを知っている島の人たちが、彼女のこと
を慕っているのが良く伝わってくる、お話です。

"堅牢"に作り込まれた世界観へ、しばし、時を
忘れ、没入できる”眠ヰネネマル”先生の表題作
全九話が収録された作品集。
印象的な収録作品は、朝早く目覚めた甘野くん。
その日、初めて出会った女性(ひと)は・・・な
「第二話　美冥さん」。”寡黙な美人”の彼女に、
渡し忘れたお弁当を届ける、甘野くんとマリー
さんが微笑ましい、お話でした。
読んでいて感じたのは、”堅牢”に出来上がった
その世界観へ、スッと入り込める、敷居の低さ。
”眠ヰネネマル”先生の高度な技量を、そこここ
に感じさせます。マリーさんに優しく抱きしめ
て欲しい”衝動”に駆られる、ふんわりした作品。

安定した人気を誇るロングランから、爆発的に
売れた”あの”ヒット商品まで、その奥深き、文
具の世界を丁寧に紹介する”榎本あかまる”先生、
表題作・1個目～11個目までを収録した作品集。
印象的な収録作品は、社内勉強会のポスター製
作をヒロインに依頼。彼女が、ポニーテールに
なり、机の引出しから取り出したのは・・・な
「5個目　ぺんてるくれよん」。お楽しみモード
の彼女が、”まさかの超大作”を仕上げる、過程
が楽しい、お話でした。
読んでいて感じたのは、ヒロインの、お気に入
り文具を扱っている時の表情と、職場内の人間
関係でみせる”塩対応”な表情との”落差”。もう、
別人です。横で見ている上司の男性も、彼女の
世界観に共感し、楽しんでいるのもまた、ほっ
こりします。
奥深い、ヒット文具の世界が、堪能できる一冊。