作品内容
50年輩のサトミさんは人生で二度、お風呂場でソレに出くわしている。もともと気配や悪寒に敏感だった彼女が、小さい頃姉たちと留守番をしていた秋の日の夕暮れ、長姉の背中に張り付くように見えた黒い影に目を奪われる。やがて入浴しようと風呂場に向かったのだが、いざ入ってみると狭い風呂場に姉の姿はない、途端に体が熱く重くなり朦朧とした視界に蠢く者は長髪を振り乱し、異様に手足の長い人であって人でない何かだった。「またくる」という謎の言葉を残して姿を消してしまった異界の者。その後、姿を現す事はなく忘れかけていた数十年後のある日、風呂場に再び現れたソレの正体とは。
初出:オーディオブックCD 「実説 城谷怪談撰集 八」収録