FRKGさんのレビュー一覧

時は5年前…広大なDLsiteに辿り着いた俺を出迎えたのはドギツい性癖と悪逆の世界であった。ただ清らかなる天使を求めた俺は幾つもの検索を渡り歩き…そして見つけたのが彼女セアラだったのだ。長い時間はかかったけれど、こうやって話をまとめていただきただただ感謝しかない。本当にありがとう。

シリーズものの3で完結編、という名が表す通り、この作品は1つの関係性にケリをつける話である。設定等は過去作を聴いていることを前提にしている……というか、「過去作を聴いた"あなた"」を核として置いていることもあり、シリーズの購入を検討している方は是非最初から聴いてみてほしい。「天使」と「純愛」という言葉に心惹かれる者にはそんはさせないと断言できる。

はっきりいってこのシリーズは地味だ。そも全年齢だし、バイノーラルの音質が凄い訳でもない、声優は途中変更があったし、シナリオが洗練されているわけでもない。
けれど、ここには確かに「癒やし」がある。純粋な善意に触れること、当たり前の生活習慣を事を思い出すこと…
そして何よりも、与えられた善意を返そうと思えることだ。ヒロイン・セアラは未熟で、一生懸命で、常に心を揺さぶられている見習いの癒し手である。博愛を謳いながらも、一人へと惹かれていく彼女に対し、聴き手は何かを返したいと思える。……そして2までは、それはある(ネタバレ)により、できなかった。完結編では、遂に聴き手は、セアラに愛を返すことができるのだ。すれ違っていた心と心が通じる瞬間ほど尊い瞬間があるだろうか?いやない。

最後のシーンの解釈は各自分かれるところだと思う。けれど、俺は、かけがえのないただひとつの愛を見つけたセアラと、それに応えた主人公への贈り物なのだろうと思う。彼らの結末を苦しみながらも描ききった作者様に改めて感謝を。ありがとうございました。

音声作品というのは、その性質上「語り手」と「聴き手」の関係はどうしても一方向になってしまう。作品の設定としてはそこに二人のキャラクターがいるはずなのだが、表現されているのは「語り手」の声のみだ。語り手が聞き返す技法で「聴き手」に行動させる事は出来るが、やりすぎると不自然さが目立つ上に、そもそも視聴者のアバターである「聴き手」を表現する必要性はない。よって、最低限の設定以外は「聴き手」が掘り下げられる事はなかった…だが、これは違う。

本作のヒロインであるネムちゃんが可愛いのはもはや自明の理である。気怠げな声、とにかく近い距離、時折見せる大胆さ‥完璧だ。しかし、この作品をさらに高みへと押し上げているのは「聴き手」となる「ネムの幼馴染」氏である。この男がとにかくかわいいのだ。

大学生で一人暮らしなのに幼馴染の家まで行って毎日起こしに行っている。料理が上手い。胸の話を振られると極度に照れる。向けられた直接的な好意をひたすらはぐらかそうとする(なお撃ち抜かれる)。ヒロインに求められる可愛いポイントを取りまくっている。Re:soundといえば「自分に自信がない女の子」だが、今回のネムちゃんは割と自信があるので「自分に自信がない男の子」がPOPしたのだろう。特に「互いの好きな所を言い合う」特にトラック5は必聴で、ヒロインとヒロインの好意の循環が最強無敵という形だ。固い絆で結ばれたやわらかな関係に癒やされる事間違いなし。

「世界」に自分が入り込むより、確かな質感のある「世界」を眺める方が好きな人にも太鼓判を押してオススメできる逸品だ。

この音声作品は、作品紹介にもあるように「二人の物語」である。これが重要な特徴と言えるだろう。

一般的に音声作品に於いては、主人公≒聞き手である。キャラクターが話しかけるキャラクターとしてとりあえず存在し、反応はするものの、そこには思考がない。迷いもない。…そして、苦しみも。そう、この物語は白い羽根の悪魔ルーシュの物語であると同時に、妹を失い、その傷を埋めようとルーシュを買い取った「彼」の物語である。
当初は顔無き聞き手の代行者として表れた「彼」は、ストーリーの進行に…ルーシュが「彼」に、そして「彼」がルーシュに心を開くに従って、そのバックボーンを明らかにしていく。そこにあるのは確固とした人格だ。生まれ、育ち、周囲との関係、因縁……

二人の物語が繋がる時、聞き手は世界を俯瞰する存在として、小さな幸せがまた一つ増えた事を喜んでいるだろう。

個人的には「男女二人」の物話がしっかりと音声で聞けるのはとても嬉しく、もしできるならば男側も声をつけて二人の傷を癒やし合う会話をじっくり聴いてみたいものである。

世間では淫魔やら悪魔やら流行っておりますが、こういう純真な天使ちゃんの供給は少ないもので、非常にありがたい作品です。

耳かきやマッサージの部分はしっかりと立体編集がされており、実際に触れられているような音になっておりました。欲を言うと効果音がもっと大きめだといいですね。

しかしこの作品で一番お勧めできるのは、最後の寝かしつけ小話、そしてラストのシーンで間違いないでしょう。
あまり詳しくは書きませんが、ちょっと切なくなり、もう一度聞きたくなること請け合いです!

値段も高くなく、すばらしい作品でした。
できれば続編を下さい!ささやき添い寝30分みたいなのでいいですから!なんでもしますから!