オレオレ御曹司 上

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オレオレ御曹司 上 [ロールシャッハテストB]
販売日 2022年11月29日
シリーズ名 オレオレ御曹司
カップリング
作者 まさみ
イラスト ラタトゥイユ
年齢指定
R18
作品形式
ファイル形式
PDF
その他
ページ数 350
ジャンル
ファイル容量
1.9MB

作品内容

あらすじ

振込め詐欺の前科持ちフリーター青年・悦巳をある日突然高級車で拉致りにきたのは被害者の孫で俺様若社長・誠一。
「警察がいやなら俺と契約するか?」
誠一が出した条件とは、住み込みの家政夫として誠一の一人娘・みはなの面倒を見ることだった。

(ホームドラマ/子持ち社長×元詐欺師家政夫/傲慢俺様攻め×一途わんこ受け/年の差)

まさみの長編BL小説。
以前「ロールシャッハテストB」というサイトに掲載していました。

「オレオレ御曹司」上巻
https://www.dlsite.com/bl/work/=/product_id/RJ438049.html
「オレオレ御曹司」下巻
https://www.dlsite.com/bl/work/=/product_id/RJ438054.html
「オレオレ御曹司」短編集
https://www.dlsite.com/bl/work/=/product_id/RJ438057.html

作者Twitterアカウント https://twitter.com/wKoxaUr47xGeAZy
@wKoxaUr47xGeAZy
(作品の裏話や情報を更新しています)

◆目次◆
「オレオレ御曹司 前編」

プロローグ

『もしもしばあちゃん?おれだよおれ』
「まあまあ、おれおれさんですか?」
『実はさ、折り入って相談があるんだ。こないだ友達から借りたバイクで事故っちゃってさ、怪我自体は大した事ないんだけど俺って○成年じゃん?とーぜん無免許で……しかもぶつけた相手っつうのが最悪にタチ悪くてさ、わかるかな、ヤクザなの。もー超やべえ、今脅されてんの。無免許でダチのバイク乗り回した挙句ヤクザの車にぶつけたなんて親にばれたら大変、学校にチクられたら退学決定。マジ困ってんの。人生の一大事なわけ。相手はさ、慰謝料と治療費払えば親にも学校にもチクらずおさめてやるって言うんだ。耳そろえて払わなかったら血尿ちびるような酷い目にあわすって……』
「おやまあ大変だこと」
『親には相談できねーし警察に泣きついたら半殺しだし、もーばあちゃんしか頼れる相手いねーの。お願いばあちゃん、ピンチの孫を助けると思って今から言う口座に振りこみ』
「ボケた年寄りをひっかけようたってその手はくいませんよおれおれさん」
『ひっかける?なんのこと?酷いな、マジに困ってんだって、冗談言ってる場合じゃねーよ』
「おれおれさんは今おいくつかしら」
『つうかばあちゃん孫の年齢忘れちゃったの?ひどっ。いやだからさばあちゃん、呑気におしゃべりしてる場合じゃねえの、追いつめられてんだよ俺。ヤクザ怒らせたら怖えーんだから、指詰めさせられるよ、親指なくなっちゃうよ』
「ふふ、面白い子ねえ」
『面白くねーよ全然!?親指なくなったら不便っしょ、箸とかペンとか持つとき人の二倍大変っしょ……いや違う違う、だーかーら、ボケツッコミ漫才はおいといて今は一刻も早く金を振り込んでほしいんだ。お願いばあちゃん、孫の命がかかってるんだ』
「おれおれさんみたいに話し上手で面白い子が孫のお友達になってくれたらねえ。もう何年も会ってないけど今頃どうしてるかしら……海外でお勉強してるっていうけど」
『やだなばあちゃん痴呆症?ばあちゃんの孫は俺じゃん、海外なんか行ってないよ、呼べばすぐ会いにとんでくよ盗んだもとい借りたバイクで』
「優しくて賢い自慢の子でね、私の誕生日には毎回素敵なプレゼントをくれたの。今はどうしてるのかしら……子供も孫も全然会いに来ないの……やっぱりだめね、年をとるとね、どうしても若い人の話についてけなくて。おばあちゃんの話はつまんないわよね」
『え?んなことねーよ』
「おれおれさんは優しいわねえ」
『んじゃ早速今から言う口座に金を』
「ごめんなさいね、年とるとすっかり耳が遠くなって……で、何の話かしら?ああそうだ、庭の薔薇が蕾をつけたの。あなたぜひ見にいらっしゃいな、とっても素敵よ。この時期はね、お庭にテーブルを出して薔薇を見ながらお茶するのが唯一の贅沢なの。年をとると足腰が弱っておちおち散歩にもいけないし、だからお庭で我慢。あの人が生きてた頃はふたりでお茶したんだけど、死んでからずっと私ひとり。ねえあなた、ぜひいらっしゃいよ、歓迎するわ。お茶会は一人より二人、大勢のほうが断然楽しいもの」
『あー……ごめん、都合がつきそうもなくてさ……いや、行きたいんだけど』
「薔薇を育てるのは大変なの。こつがいるの。虫がつきやすくてね、殺虫剤でのお手入れが欠かせないわ。ほんとはあんまり使いたくないんだけどね、しかたないわ。アブラムシは大敵。殺虫剤で撃退しなきゃ。可哀想だけどね、綺麗な花を咲かせるためには大量殺戮も辞さないわ。ふふ、バイオレンスかしら。土もね、大事なの。土と相性が合わないとあっというまに枯れちゃう気難しい花よ、薔薇は。そのぶん見事な花をつけてくれると嬉しいけどね、なかなかうまくいかないのよねえ」
『へえ、薔薇育てんのって大変なんだ』
「おれおれさんもぜひ一度いらっしゃいな、美味しい紅茶とビスケットをご馳走するわよ」
『口座に振り込んでくれたらすぐ行くよ』 
「あらごめんなさい突然電話の調子が……聞きとりにくくって……がちゃがちゃ。悪いけど後日また改めて掛け直してくれません?」
『今がちゃがちゃって口で言わなかった?言ったよね?自演したよね?』
「ではまた。お元気で、おれおれさん」
 
『頼む、ほんと洒落にならないんだって、カウントダウン始まってんだって』
「前置きも時候の挨拶もぬき?マナーのなってないおれおれさんは嫌いよ」
『ごめん、俺ばかだからジコーの挨拶とか知んね、見逃して。つかどうでもよくて、俺こないだ話したよね、今超ピンチだって。一日も早く金振り込んでくんねーとキレたヤクザに半殺しされそうなんだけど、ばあちゃんは実の孫が東京湾にコンクリ詰めで沈んでもいいの?庭の薔薇眺めながら呑気に茶あしばいてていいの?』
「ひどいわ、人を血も涙もない鬼婆みたいに。ショック」
『年金しこたまためてんでしょ、貯金あるんでしょ?なあ頼む、この通り、ばあちゃんの金俺のために使ってよ、絶対返すから!ヤクザ連中もいらついてるみたいでさ、おもて出るたんび変な車につけまわされて生きた心地しねえよ。俺にバイク貸した友達は俺のせいでトラブルに巻き込まれたって半泣きだし針のむしろだよ、金さえあればごたごた解決すんの、俺の未来に投資してよ心入れ替えて孝行すっから!』
「毎日毎日ご苦労さまねえ、そんなに叫んだら喉が枯れるでしょ?目の前にいるなら紅茶のひとつでも淹れてあげたいんだけど。おれおれさんはどんな紅茶がお好きかしら?アッサム?ダージリン?セイロン?オレンジペコーなんてどうかしら」
『ミルクティーとかレモンティー以外に種類あったんだ……や、スタバとかならよく行くんだけど紅茶ってあんま飲まなくってさ。飲むとしても薄くて安いインスタントのだし』
「もったいないわねえ、本当に美味しい紅茶はお砂糖やミルクなんて入れなくても十分飲めるのよ。一度ご馳走してあげたいわ。焼きたてさくさくのスコーンもつけるわよ」
『スコーン?て何?ビスケットの仲間?』
「親戚かしら。イギリスのお菓子よ。クロテッドクリームをたっぷりつけて食べるとほっぺがおちるわよ」
『クロテッドクリームってなに?どんなの?普通の生クリームとは違うのか……マーガリンみたいな感じ?』
「物知らずなおれおれさんねえ。あのね、クロテッドクリームっていうのはね……」

『俺もう死にそう』
「のっけから物騒ねえ。どうしたの死にそうな声だして」
『死にそうな立場にしてるのはだれですか。ばあちゃんがぜんぜん金振り込んでくんねーから今追い込みかけられてんの、ストーキングされてんの。このままじゃ完ぺキ拉致られて臓器摘出売買ルートだよ、やべえよ、裏社会に片足どころか首までどっぷり。ばあちゃんは可愛い孫がヤクザに拉致されて臓器ばらばらに売り飛ばされてもいいの、ばあちゃんが振り込む金で俺の首と胴体と心臓は繋がるんだよ!』
「今日はいいニュースがあるの。庭の薔薇が咲いたの」
『無視かよ』
「おれおれさんに真っ先にご報告したくって」
『あんがと』
「カーテン開けたら真っ先に目にとびこんできたの。おかげで今日は一日中幸せな気分よ。はしゃいで上になにも引っ掛けずベランダに出たわ、庭の花壇の隅っこ、そこだけぱあっと明るくって。それはもう可愛らしい薔薇なの、ピンク色で」
『そっか。俺も見たいな』
「……………」
『ばあちゃん?』
「お庭の薔薇が咲いたの。とっても綺麗なのよ」
『いま聞いたよ、二度くりかえさなくていいって』
「……ひとりじめはもったいないわよね……誰か、他の人にも見せてあげたいわ。このおうち、広すぎるわ。いつからこんなに広くなっちゃったのかしら」
『広いうちのがいいよ、羨ましい。うーんと足伸ばせる風呂やベッドなんて最高じゃん』
「そうかしら………」
 
『もしもし?おれおれ』
「どなた様ですか?」
『え?』
「あ。………私ったらうっかりしてたわ、ごめんなさい。おれおれさんの声を聞き間違うなんてどうかしてるわ、毎日毎日しつこくお電話くれるのに。年のせいかしら、近頃物忘れが激しくってやんなっちゃう」
『あのさ……ばあちゃん、大丈夫?』
「心配してくれるの?ありがとう、嬉しいわ。おれおれさんはいい人ね」
『………別に……』
「そうだわ、私ったらすっかり忘れてた。おれおれさんから電話がきたら真っ先に言おうって思ってたのに。今日ね、お庭の薔薇が咲いたの。花壇の隅っこにピンク色の薔薇が。朝カーテンを開けたら真っ先に目にとびこんできてね、楽しみにしてたからとても嬉しくって……」


『ばあちゃん。冬に薔薇、咲かないよ?』


―お客様がおかけの番号は現在使われておりません―
―お客様がおかけの番号は現在使われておりません―

本文サンプル

「料理……たくさんおぼえたんすよ」
感じてる顔を見られたくなくて、腕の下に隠す。
「あんま上達してねえけど幼稚園で仲良くなったママさんたちにレシピ教えてもらって、本見て……味はいまいちぱっとしねえけど、みはなちゃんだけじゃなく誠一さんも褒めてくれるメシ作りたくて……毎日帰り遅えから、冷めても美味しいメシを作るのが目標で」
息を継ぐ。
吸って吐いてまた吐いて潤む目を瞬き、たどたどしく愚痴る。
「毎日どんな思いで誠一さんの分にラップかけてっか知らねえくせに……」
どんなにか誠一の帰りを待ち侘びていたか知らない癖に。 
「っく……」
「俺の手にくちゃくちゃいじられて恥ずかしいのか?……勃ってきたぞ」
衣擦れの音がいやに耳につく。息を吸って吐くごと鼻の奥がつんとする。
くちゃくちゃと卑猥な水音立つ中、ヘアバンドがずれて前髪ばらつく羞恥の表情でぐずる。
「せいいちさ、や……も、きもちわりぃ……からだ熱くて、へん……」
弱弱しく喘いで訴える。体の変化に心が振り回される。腰が呼吸を合わせ上擦り始める。
アルコールの働きで頭が朦朧とし意識が拡散、快楽に巻き込まれ押し流されていく。
「淫乱だな。初めてで腰が踊るのか」
体がふわふわ浮ついて、下半身は意志を裏切って屹立していく。手足はふやけきってさっぱり言うことを聞かない。
少しでも射精の瞬間を引き延ばそうと違うことを考える、冷蔵庫の中身を賞味期限の迫った順にひとつずつ数え上げて気をそらす。
紅ジャケ、和牛、里芋の煮っ転がし、ポテトサラダ、福神漬け、梅干、果汁100パーセントのオレンジジュース、いちごジャム……
かすかな物音が雑念を払う。
「!」
動く誠一の肩越し、廊下との境のドアにぼんやりと影が映っている。
ドアにはめ込まれたガラスのむこう、寝ぼけまなこで立ち尽くすパジャマ姿のみはな。自分とほぼ同寸大だろうミッフィー抱き枕の耳をもってひきずり、うつらうつらした半眼でこちらを見つめている。
「誠一さん後ろ、みはなちゃんが!」
我を忘れて叫ぶ。
悦巳の分身をしごきたてていた誠一が硬直、振り返る隙をつき床へと転げ落ちる。
逃げよう、逃げねえと。

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