価格
990円

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作品内容

場末の劇場の尺犬になって

終戦から二カ月。「フェラは五十円、ケツは百円だ、やれるか?」「はい、今晩食う物も泊まる所もないので」「口に出された精子も飲むんだそ」「はい、やらせてもらいます」

田村は三十を少し過ぎていた。かつては町工場で旋盤を回していたが、空襲で工場は消え、妻子は疎開先で死んだ。残ったのは自分一人。夜になると腹が減り、寒さに震え、明日のことが見えなかった。
ある日、友人に誘われて潜りの劇場の裏に行った。看板に小さく「奉仕員募集」と書いてある。話を聞けば、舞台とは別に、客のものを口で処理する仕事だという。一回につき五十円。一日に十人やれば五百円になる。それで飯が食え、安い宿に泊まれる。
 田村は最初、吐き気がした。男のものを口に含むなど、考えたこともなかった。ゲイでもない。普通の男だ。だが腹が鳴った。友人は「プライドなんか持っていても飯は食えんよ」と言った。田村は首を縦に振った。その夜から、彼は狭いカーテンで仕切った劇場横の小部屋で跪くようになった。

 最初の客は四十代の男だった。臭い酒の匂いがした。田村は目を閉じ、唇を開いた。熱いものが舌に触れた瞬間、全身が拒否した。苦い。臭い。屈辱が喉まで込み上げる。客は無言で腰を動かし、やがて熱いものを口の中に吐き出した。田村はむせて吐き出しそうになったが、我慢して飲み込んだ。それが条件だった。客は五十円を置いて去った。
 田村はカーテンの陰で、長く座り込んだ。手が震えて止まらなかった。

 二日目、三日目と、客は続いた。若い男もいれば、年寄もいた。皆、舞台を見て興奮したままやって来る。田村は毎回、同じことを繰り返した。口を開け、精子を受け、飲み込む。終わると口をゆすぎ、次を待つ。夜になると、安い飯屋で定食を食べ、ドヤ街の宿に戻る。布団に入っても、口の中に残る味が消えなかった。悔しかった。悲しかった。自分は何をしているのか、と何度も思った。だが腹が減れば、また劇場へ足が向いた。

 一週間が過ぎた頃、変化は静かに始まった。最初は気づかなかった。客のものが喉の奥に当たる感触を、以前ほど激しく拒まなくなっていた。熱いものが口に広がる瞬間、体がわずかに強ばるのではなく、むしろ待ち受けているような感覚があった。田村はそれを「慣れただけだ」と思い込もうとした。生きるために体が麻痺したのだと。

 しかし二週間目の夜、はっきりと分かった。最後の客が射精したとき、田村はごくんと音を立てて飲み込んだ後、小さく息を吐いた。喉に残る熱さが、嫌ではなかった。むしろ、次の客が来るまでの間、その余韻を舌で確かめていた。自分でも驚いた。男の精液を、待っていた。欲しがっていた。

 その夜、宿に戻ってからも眠れなかった。天井の染みを見つめながら、田村は自分を問いただした。俺はいつからこうなったのか。生きるために始めたはずなのに、いつの間にか体が覚えてしまったのか。悔しさが、今度は別の形で胸を締め付けた。屈辱ではなく、自分自身への恐れだった。

 翌日、劇場の裏で休憩しているとき、同じ仕事をしている年配の男が声をかけてきた。
「お前、最近、顔が変わったな」
田村は黙っていた。男は低く笑った。
「分かってるだろ。最初は皆、嫌々やる。でもそのうち、喉が欲しがるようになる奴がいる。お前もそうだろ」
田村の背中に冷たいものが走った。男は続けた。
「それを知られたら、どうなると思う。普通の仕事にはもう戻れねえ。お前の口は、もう男の味を覚えた口だ。体は正直なもんだ……」
 田村は何も言えなかった。男はしばらく沈黙した後、
「何も言わなくていい。俺も同じだ。生きるために始めたのに、体が先に堕ちた。お前も同じ穴の貉だ」
そう言って男は去った。田村は男の背中をじっと見つめた。身震いがした。自分自身に。体が覚えてしまった欲求に。

◆挿絵6枚入り
◆紹介画像、サンブルにAI生成画像を使用しております。
◆使用AIソフト名「seaart」

作品情報

販売日
2026年10月13日 0時
年齢指定
R18
作品形式
ファイル形式
PDF
その他
ゲイAI一部利用
ページ数
63
ファイル容量
1.14MB
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