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昨年から急に回転率を増してるKeyのキネティックノベルシリーズの新作です。
プラネタリアンから始まったこの枠にはやはりSFがよく似合う。そしてライターは田中ロミオ。私は彼の信者です。
とはいえ信者の贔屓目に見ても、今作がポストアポカリプ系のSFとして手堅くまとまった傑作たることは疑いを得ないでしょう。
美麗なビジュアル面――背景やキャラクター、スチル――を贅沢に使い、簡潔にして力強い文章のテンポの良さがそれに負けず力を持っています。音楽も派手さはないですがじんわりと効いてくる。良い。
もちろんストーリーやテーマは決して、そうした素材や表現に負けていません。ポストアポカリプスものには絶望感が必要だと語ったライターだけに、世界観はディテールにこだわって作られており、それがロードノベルとして成長譚(ビルドゥングスロマン)として、話の筋を細部に渡って見事に支えています。
AIも出てきます。というか主役です。色々なSFガジェットもあります。スケールの大きさあります。
文明の崩壊にある意味で真摯に向き合い、その上で王道とも言えるストーリーがあるわけですが、でもそれが陳腐ではないのはこの作品の巧さでしょうか、くすりと出来るユーモアもあるよ!
そして歳を取ったおっさんだからか、この作品の中核をなすテーマには久しぶりにじんときました、最後には涙腺を刺激されてしまいました。泣きました。泣きゲー。
この物語の最後は、人によっては不満があるかもしれませんが、私は偉大な勝利だと思いました。そこには静かな感動があります。
プレイ後、思わず近隣の店舗に豪華特典版を買いに行くことに。1万円もしましたが後悔はしていません。特典SSもあるしね。
プレイ時間は5-7時間くらいでしょうか。時間だけで見れば値段相応かもしれません。でも値段以上の価値はあると思います。まさしく良質の小説一冊を読み終えたかのような素晴らしい体験でした
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2013年12月01日