folioさんのレビュー一覧

川乃瀬由羽さんのような確かな技量をお持ちの方が、
朗読それ自体をネタにしたメタっぽい作品を作るとなったら、
これは期待しない方がおかしいじゃないですか。

ただ、シナリオの中の、月は晴れても心は闇な、
本来、心内とは裏腹に演技していくところの朗読それ自体は、
最初にちょっとだけグズつく以外はちゃんと読めちゃうんですよね。
お姉さん、プロだから。

しかしその後、一本筋の通った厄介さをもつお姉さんの話は、
とんでもない方向に向かって突き進んでいき、
少なくとも自分はトラック5、圧縮されたキラキラギラギラした感情に
唖然そして、(聞き終わってしばらくしてからですが)喝采、
うわ、これは大変な音声作品だと、こういうことなのかと
その澄み切った地平に立ち竦み、絶望と希望を確かに感じていました。

一応はまっすぐなシナリオで楽しめますが、
呆然とお姉さんを見送った後に、時系列で情報を整理し、
青空図書館などというお姉さんの様々な仕掛けや
作品構造自体に想いを馳せると
実はここまで語っておきながら語ってないところが重要で
さらにはそれって作品のテーマ自体に関係すんじゃないかとか
どこまでも多層的かつ厄介な音声作品だと気付いた時には
またもう一度聞くしかないなということになってしまう、
本当に困った話なのです。

小悪魔でもメンヘラでもない、痛切に
始末に悪いお姉さんに会いたい人におすすめです。

どのお話も、音声作品ということが考えられている
シナリオと構成で、さらに全体として、疎外や離脱、逃避からくる
様々なモチーフが通底して、何回も周回して聞ける/聞くことになる構造になっています。

「波は語る」
思春期の少年の力みや解放が感じられる演技が素晴らしいです。
シナリオの、寓話に通じる波と島のイメージに、
これは大変な作品だと、姿勢を正した作品です。

「流刑王女」
本当にすごく…王女様です。テキストも演技も、王女様です(語彙)。
元王女である知的な観察と思考、そして咎人につながる感受性のテキストを、
王女であることを感じられる演技が、
情報量を何倍にも上げて圧倒されます。
王女である演技というのは、内言語の時は少女なのに、
会話になると、もはや必要ない公的なフェミニンさが出てしまう、
というようなことです。
王女マニア(何だそれは)の方にすごくお勧めしたい作品です。

「飛行列車」
静かな中、小さく火花のように煌めく感情が、
話され俯瞰されてそして向き合えるようになる…
これも演技とシナリオが素晴らしいです。
台詞の内外を表す環境音になっている空力音がすごく良いです。
変化と共に精神が段々と澄み切っていく感じがします。

漫画雑誌の読み切りの作品が、妙に記憶に残ったりすることがあります。
能動的な行動原理による物語は、聞く者に勇気をくれます。
少なくとも自分はこの作品を聞いて、より静かに現実に向き合えるようになりました。
おすすめです。

作品の「サンプル1」を聞いてもらえれば分かりますが、
2種類の意識的な演技がなされています。
普通の人間のような音声と、少したどたどしい音声です。
作品の主人公は、アンドロイドです。
そこを考えると、表現力たっぷりの普通の恋人のセリフと言い方の部分は、
内部情報としては恐らくwaveファイルのように実装されている定型文で、
「マスター 耳 弱い。インプット しました」のような
やや無機的なたどたどしい、機械らしい部分こそ、内部関数に支配された
「アンドロイドとしての本当の心」ということになります。

これだけでも、いかにこの作品が音声作品、またSFとして
大変なポテンシャルを持つとんでもないものか分かると思います。

発話の際、感情のニュアンスは助詞に顕著に現れるので、機械音声は
特徴量が難しい助詞の発声が内容と微妙に外れて、つなぎがおかしかったりしますが、
ここも意識的に表現されています。ここは何の心、学習なのでしょうか…。

内容も、展開などは特になく地味ですが、
アンドロイドとしての学習、愛憎が見え隠れする
キラーフレーズが満載ですごいです。

「マスターの背中はがんばりやさんです」というポエティックなものから
「おんなの膝に」「にんげんのおんなに」という凄みがあるものまで、
電気娘としての愛情と艶めかしさで圧倒されます。

例えば「恋人っぽいセリフを一所懸命に考えている本体」って、
人間でいえば、背伸びする時期、…少女ですよね。
つい少女として状況を捉えている自分に気づき、
いや、しかし、少女という設定は特になく…と意識し、
というように、何かに焦点を合わそうとすると、ふっとそれがズラされてしまうような、
夢の中のような謎の情報量で、作品はリスナーをかき乱します。
人造人間恋人27号の戀、必聴です。

3人の女子と、着脱可能精神直結型ちんちんの精の音声作品です。
エロとバカがとんでもないアイデアで融合した作品です。

誰に感情移入して聞いてもいいです。
しかし、人以外に感情移入して聞くことをおすすめというか
自然とそうなるようにものすごく考えられた作品です。
それが、ちんちんです。

男子諸兄、ちんちん、ご自身の一部として
日々大事にされていることと思います。
しかし、他の諸器官がそうであるように、意識した時、
それは別人格だったり、デバイスになったりしてませんか?
今回、俺が私が僕がちんちんになれます。
ちんちんはデバイスじゃないのです。デバイスがあなたなのです。
そして本作品で快楽を感じているのは、ちんちんの相手の女子だけでなく、
ちんちんに接続された女子なのです。
あなたという男性器のエロプロパティを女子の脳が快楽情報として受け取る…
エロクオリア(何だそれは)どうなってるんですか!?
…エロいですよね…。

接続された女子の女子による女子のため(…?)のエロという形式、
初体験の色々を様々に自然な第三者の視点で語り、
ちんちんの精はあくまで外的視点の時にしか喋らない…。
エロを分析して構造として再配置する手法、
何を語って何を語らないかというテキストの取捨選択、
通常は怖くてなかなか入れられないコミック系の効果音の多用、
考えぬかれた洗練に、音声作品だけでなく、
小説も書かれているラクウェルさんだからこその音声作品だと感じました。

そして、3人の女子を演じる声優さんも、エロ的に複雑な状況である内容を、
様々な形で声の情報に入れてご演技されていて、素晴らしいです。
ちんちんの精の男性声優さんも、とんでもない存在感で、その登場シーン、
背景の音楽もあり、笑い転げて聞きました。

勃起する女子のちんちんになりたい皆様、この作品で是非ちんちんに!

作風はレトロゲーオマージュですが、人々が勇者のために収めている「勇者税」、
それが故に白い目で見られるている勇者という設定だけですでに面白く、
21世紀の今作る意味のあるしっかりとメタレトロゲーで、すごいと思います。

良く喋る、天然・毒舌の姉妹従者との道中も楽しく、
次はどんなやりとりがあるのかとついゲームを進めてしまい、
一緒に冒険をしている仲間として愛着が湧きます。
敵のモンスター達も可愛いです。
メインシナリオ自体もなかなか熱い展開もあり、けっこう骨太でした。

しかし、何より自分が心を鷲?みされたのは、姫様です。
多くは語れませんが、ギャル語で喋る魔法の天才という強烈なキャラでありながら、
その言動からは時折痛切な感情が垣間見れ、ハートを射抜かれました。
マジで姫様のスピンオフ作品を見たいです。

このサークルさんの作品は、中程度の長さでサクッと終わる
(ように見えるw)作品が多いですが、これは質、量ともにしっかりと
作り込まれた長編で、ぶっちぎりでオススメです。

ふたなり純愛の百合子さんは、他では見たことがないです。
素敵で可愛くて、そして確かに、女性だけではないのです。

声優の花守このはさんは、ぱっと聞きの印象では、
キャッチ―で可愛い声なのですが、よくよく聞くと、
薄味にしっかりとした厚みがある、
味でいえばフグみたいな(←語彙…)演技をなさる方で、
特にこのお話は、ふたなりちゃんの女の子を描くのに、
そのフグ成分(←)が存分に生かされている気がします。
女性というだけでない、不思議な魅力を表現されてます。

紹介文にあるような「初々しさ」ですが、
緊張感や僅かな生々しさとかそういうものが混ざって、
聞いていてドキドキします。

パッケージキャラ絵も、実はふたなりちゃんとしてすごく納得いきます。可愛いですよね。
ハイレゾ仕様とのことですが、お風呂ものとしては効果音等は普通かと。
(まあ、最近のお風呂ものの録音・効果はレベルが高すぎておかしいと思いますが…。)

シナリオはもう少し頑張って欲しかったなあというところがあります。
風俗、ふたなりのコンプレックス、純愛、それぞれ相反する要素があって、
何回聞いても、情報やそれに伴う感情がうまく処理できず、
ややお話には入り込めないところがあります。
演技から、百合子さんはかなりしっかりした人だなと思えるだけに、
少し残念なところです。

色々書きましたが、他では会ったことのないキャラです。
純朴で繊細な魂に触れたい方におすめの作品です。

サークルさんの別作品「えろすか」が余りにも楽しかったので買いました。
S@G@2のパロディです。

オールカラーで高品質な4コマが、ひほうの数77個…
(+色々おまけ漫画)載っています。

絵がかなりいいです。すごくセンスある線で上手いです。
主人公達の、元ゲームでは名前や性別も変えられる、
ややモブいキャラ達をそのモブさを失わないまま愛らしく描いていて、
いつまでも見ていられます。

ギャグも原作への愛がありながらキレのあるもので、
ページをまたぐ繰り返しネタもあり、
また、ネームの間が絶妙なまったり系の風味もあって、
これも繰り返し読める再読性を高めてます。

原作愛が深すぎて、元ゲームをやっていないと面白さが分からない
ところもあるかもしれないですが、内容紹介のところでも見れる
「東に〇南に〇」ネタなどは、当時のタイルパターン上での移動RPG
あるあるで、RPGファンなら誰でも面白いのではないでしょうか。
(…って、これは今のRPGツクール作品でも再現されてますね。)

もちろん、S@G@2を遊んだ人にはおすすめです!
これだけの熱量とセンスとキレを持ったS@G@本は
そうそうないです。

SaGa(言っちゃった)大ファンの自分で、
二次創作物もかなり買ってきた自分ですが、
いいものが読めてめっちゃ嬉しかったです。

DLsite で多くの作品を色々と見ている時、
この作品のジャケ絵に目が留まり、すごい可愛いしお洒落だな…と
何となく「お気に入り」に入れ、体験版をダウンロードし、
後日体験版を聞き、不思議な声だなあなどと思い、
さらにまた数か月後、なぜかまた販売ページを訪れ、
そして購入し、聞き始め、その頃になってやっと、
自分が幸恵ママに恋していたことに気付いたのでした。

聞き終わった今、なぜこの作品が、どちらかというと文芸作品のような
albos氏の繊細で素敵なイラストなのか、なぜ分かりやすい萌え声ではない
綺羅氏の演技なのか、すっごい分かります。
ちょっとこの作品の狙いのエロさが、
このレビューで少しでも伝わるといいなと思って書いています。

幸恵ママなのですが、薄幸で痩せぎすで元気いっぱいというキャラで、
聞きおわってみると、ああ、こういう人って、
何かちょっと底知れないエロさ、生活力があるよな!と感じさせるものがあります。
リョナ風味もあるシナリオも、ああ幸恵ママなら、ここから生還できるだろうな、
という。
正直それだけなんですが、ここにリアリティとエロを
感じる貴方は買うべきです!
なかなか他で見るエロさではないと思います。

音声作品はジャケ絵以外の絵は、せいぜい差分が同梱されて
いる程度ですが、この作品はalbos 氏の素敵なイラストが7枚
(内1枚は設定、1枚はジャケ絵ですが)も入っていて、
そのどれも作品世界を広げ、幸恵という人物を表すもので、
すごくいいです。

綺羅氏の、お腹から出る感じのお声と演技は、疲れて乾いて
しかしどことなく明るさがあって、人間の根元的なエロさというか、
そういうものを感じさせて、非常にエロいです。

シナリオはドライで、絵は繊細で、声はエロ…!
一見バラバラに見えますが、相乗効果で結実しています。
オトナの作品です。おすすめです。

優子ちゃん演じる花守このはさんの熱演に一気に引き込まれ
そして暴力の暗い昏い冥い奈落の暗闇に落ちて帰還できません。

本来、エロいものって、後ろめたくて、見られたくなくて、
見られたら恥ずかしくて、だからといって捨てられる訳でもなくて、
という重くて暗くてでも引き寄せられる魅力のある…
そういうものだったはずですよね。

久しぶりに、そういう、
こんなもの持っていていいのかという気分になったすごい作品です。

優子ちゃんは、少し隠語を言ってくれますが、それが2次元っぽさを
多少漂わせてくれて、少し救いになるという、隠語が救いになる位、
一切の言い訳なく監禁陵辱のシナリオになっています。

未分化なものを染める粗雑なバイオレンスの快感、
それもまた性の本質の1つでしょう。
もちろん、そこに興奮する人にはおすすめです。

そして、また別に、狂気とも言える絶望を持ち、
残念ながらすでに生きる力の一部になってしまっているような人…
自分と同じ絶望の人間が傍に居て欲しい貴方にも、
そっとおすすめしておきます。

ヌルウナ嬢の、笑い方の演技が素敵。
ラストも、催眠術にかかったような終わり方で、
上質なアルコールに似た、
これぞまさにサキュバスの最高級ソープのなせる魔術か。
…すごいです。

DVDビデオのパケ絵のようなデザインですが、
中の動画は、最近流行りの人型のオブジェクトの3Dがぐりんぐりん動いたり、
平面でできたあやつり人形がフワフワと動くようなアニメではないです。

正直なところ、そういうものよりも画面上で動いている面積は少ないのですが、
アニメする箇所が、驚くほど声や息遣いと合って動く口だったり、
良くみると重量感を出すために細かく制御されているパーツの動きだったり、
職人芸的なこだわりで非常に丁寧に作られていて、感動です。
「画面全体が動くアニメ」というより、「絵の一部が動く妙な艶めかしさ」
を追求したエロさだと感じました。

また、声優の月城姫乃さんの、おっとりのような小悪魔なような
コケティッシュな演技が、清浄な泉のような沼のような、
まさにスライムっぽい独特のエロ可愛さで、
本当に素晴らしいです。

事後が優雅ともいえる余韻の時間に持っていけるエロというのは、
エロ作品群の中でもなかなか無いと思います。
おすすめです。