-
{{ product.dl_count_total|number_format }}
{{ item.dl_count|number_format }} - {{ product.dl_count|number_format }}
-
{{ product.rate_average_2dp }}
作品内容
(一体なんでこんなことに……)
僕は今自分の部屋にあるベッドの上で仰向けに倒れていた。
そんな僕の上に、覆い被さるように赤いドレスを着た少女が突然飛び込んできた。
まあ、ここまではいいとしよう。
……いや、全然よくないんだけど、とりあえず今はよしとしておきたい。
普段ならそれだけで十分問題なんだろうけど、今はそれよりももっと大きな問題がある。
繰り返すけど、僕は今ベッドに倒れている。現れた少女は僕の体にちょうど覆い被さるように倒れている。
つまりこれがどういう事なのかというと、ベッドの上で僕とその少女の距離は、非常に近い……というか、隙間がないぐらいぴったり密着しているということだ。
堅く無骨な男の体とは違う、柔らかい女の体が上から押しつけられているわけだ。特に胸の辺りはその感覚が顕著で、一般的な男子から見れば嬉しいハプニングという奴なのではないだろうか。
……うん、でも、問題にすべき点は実はここでもなかったりする。
常識的に考えれば、自分の部屋にいて突然女の子が降ってきただけでも驚きだろうし、そんな女の子に押し倒されるような形でベッドに倒れていれば、いろんな意味で心臓が破裂しそうになるんじゃないだろうか。それも僕みたいに思春期の男子にすれば尚更だろう。
でもやっぱり、問題点はここじゃない。
今僕の置かれた状況を考えれば、その思春期の男子の胸躍る状態ですら、些末なことにしか思えないだろう。
さて、やっぱり繰り返すことになるけど、僕と少女の彼我の距離はほぼ零と言って差し支えない。
体と体がくっついている。なら、顔と顔はどうなっているのか?
その少女が、首の異様に長い新種の人類でなければ、僕と少女の顔と顔は、体と体との距離と同じようにかなり近い位置にあるはずだ。というか、今僕の目の前に少女の顔がある。あまりにも近すぎて少女がどんな顔をしているのかよくわからないぐらいだ。
今の僕にかろうじて見えるのは、せいぜい少女の頬が真っ赤になっているということぐらい。
どうして少女の頬が赤くなっているのか。これはもう、性別が男に分類され、女性の心理、いわゆる乙女心や女心といったものに、これっぽっちも興味も関心も知識もない僕であっても、わかっていた。
何故ならその原因はというのは、どう考えても僕と少女の唇がまるで計ったかのようにくっついていること以外にありえないからだ。
いくら僕でも、少女の紅潮の原因がそれであることぐらいは察する事ができる。
……さてと、ここまで並べてしまえば、僕は今自分の状況を明確に把握できていると思うのだけど、念のためにもう一度簡潔に確認してみよう。
学校が終わったので帰宅して部屋に入って鞄を投げ捨ててベッドに寝ころんだら、突然空中から女の子が現われて、僕の上に落下してきたと思ったら、僕と彼女の唇が重なり合っていたんだ。
……よし、やっぱり意味がわからない。
いやもちろん現状はさっきまで延々と確認していたから把握はしているのだけど、一体何をどうしたからこんな状態に着地したのかさっぱりわからない。少なくとも僕は、今日一日のどこかで、自分の部屋のベッドの上に少女が落ちてくるようなスイッチを押した覚えはない。
なので、改めて言わせてもらおう。
(一体なんでこんな事に……)
無駄だとは思うけど、とりあえず今日一日を振り返ってみようか……