第四資料室報告書 第2号 御神渡? ー四皇子塚ー

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第四資料室報告書 第2号 御神渡? ー四皇子塚ー [第四資料室]
サークル名 第四資料室
販売日 2026年02月24日 0時
シリーズ名 第四資料室
年齢指定
全年齢
作品形式
ファイル形式
PDF
その他
AI一部利用
ページ数 17
ジャンル
ファイル容量
1.71MB

作品内容

御神渡? ― 第四資料室報告書 第二号

第四資料室報告書 第2号 御神渡? ー四皇子塚ー [第四資料室]

明治期から綴られてきた断片資料の余白に、小さく残された「御神渡?」の文字。それは本来存在しないはずの記録だった。四皇子塚周辺では、一定の間隔で掘削痕が現れては消えるという不可解な報告が繰り返されている。前任担当者はその現象を「線」と呼び、やがて理由を語らぬまま職場を去った。廃棄候補となった資料の確認を命じられた第四資料室係の〈ぼく〉は、高千穂の地へ向かう。現地で確認されたのは掘削の痕跡が存在しないという事実だった。しかし墓地で見つけた“削られた線”が、資料の消し跡と静かに重なったとき、記録は廃棄ではなく保存へと傾き始める。誰が線を引き、なぜ途中で消すことをやめたのか――日常の業務の隙間に現れる、小さな揺らぎの報告書。

※サンプルのイラストは一部AI生成を利用しています。

旅館の廊下は、夜になると音を失う

第四資料室報告書 第2号 御神渡? ー四皇子塚ー [第四資料室]

高千穂の山あいに建つその宿は、観光客向けというよりも、土地の時間に取り残されたような場所だった。夕食の時間を過ぎると客の気配は消え、階段の軋みだけが建物の古さを思い出させる。

 ぼくの部屋は二階の端だった。窓は駐車場に面しているが、外灯はひとつしかなく、光は途中で途切れていた。車の影が黒く固まり、その向こうは完全な闇になる。

 机の上には資料を広げていた。
 明治期の断片資料の複写。赤鉛筆で引かれた線のある地図。そして余白に残された、小さな文字。

 ――「御神渡?」

 スタンドライトの光が紙の繊維を浮かび上がらせる。擦り消そうとした跡は、昼間よりもはっきり見えた。鉛筆の芯を寝かせて削ったような荒れ方が、途中で止まっている。

 消すなら消せたはずだ。
 それをやめた理由を、ぼくはまだ知らない。
 窓の外で風が動いた。駐車場の砂利がわずかに鳴る。誰かが歩いたようにも聞こえたが、カーテンを開ける気にはならなかった。

 現地確認は明日で終わる。
 掘削痕が存在しないことを確認すれば、この資料は廃棄理由が成立する。
 本来なら、それで十分だった。
 だが地図の上に引かれた一本の線だけが、どうしても視界から離れない。
 尾根を越え、塚をかすめ、そして墓地の方向へ伸びている。
 偶然の一致だろう。
 そう判断するのが第四資料室の仕事だった。

 缶コーヒーの蓋を開けると、乾いた金属音が静かな部屋に響いた。
 その瞬間、廊下のどこかで足音が止まった気がした。

第四資料室は、保存期限を過ぎた資料の廃棄可否を判断する部署である

第四資料室報告書 第2号 御神渡? ー四皇子塚ー [第四資料室]

そこでは、理由の分からない記録や、説明のつかない報告書が日常的に扱われている。本件はその一例に過ぎない。

四皇子塚周辺で確認されていた掘削現象は、前任担当者の死亡以降、二十年以上発生していない。現地確認の結果も同様であり、廃棄理由としては十分だった。
しかし資料の余白には「御神渡?」という文字が残されていた。消そうとした擦過痕は途中で止まり、誰かが判断を保留したまま時間だけが経過している。

そして墓地で見つかった線。
それは報告書に記す必要のない一致だった。
本報告では現象の解釈は行わない。第四資料室は記録を残すだけである。
ただし、本件資料は廃棄棚より保存対象へ移動された。

理由は確認できなかった。

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