暖かさが内包された鼻腔をくすぐる陽光を纏った春風のような声が耳元で聴こえては脳を直接刺激する。無邪気で可愛らしい声が私を撫でるように右へ左へと跳ね回り、私の心を覗き込む。この歩く天真爛漫はいつでも掌握できる私の心臓を指ですーっとなぞるようにして今にも籠絡されてしまいそうな私の心の機微を楽しんでいるように思えた。
その様子をやれやれと一歩引いて眺めるような声。月の弧を描くようなしなやかさの中に花の蜜のようなわずかな甘さを残した僕っ子はリンドウだ。モモとは対照的に落ち着いて少し冷んやりとした印象の声は夏の火照った頬に当てて涼んでみたくなる。
そんな彼女たちの存在を近くに感じる生活感を作品内で強く感じることができる。衣擦れの音、雨に濡れた足がフローリングを叩く「ペタペタ」という吸着音。生活音ひとつ一つがリアリティを高め、彼女たちとのやり取りに含まれるあまりの多幸感に私がいるべき世界はこちらなのだと現世を離れる選択もチラついたほどだ。
イチオシは何と言っても添い寝シーン。近い。声があまりにも近い。彼女たちの声の近さと比例して天からの私のお迎えも近かっただろう。あの時ほど空気が美味かった深呼吸はそうそう無い。あまりの距離感に囁きの中にわずかな湿り気を帯びたクリック音や呼吸の度に聴こえる深い気道音が安心感を抱かせ、深い眠気に誘われそうになった。寝言特有の肺から漏れ出た無垢な吐息が聴いていてとても心地が良い。
先ほどまで控えめだったリンドウが突如耳元で「お礼に何でもするから」との囁きに添い寝どころではないと感じた『キミ』たちも多いことだろう。心配ない。私もだ。夢現で眠気に抗い寝言を言うモモを撫でてあげたい?私もだ。
モモ役の伊藤舞音さん、リンドウ役の浅見香月さんの声を知りたい、楽しみたい方にぜひお勧めしたい作品。既に信者の方には刺激が強い作品となっている。
Mots clés sélectionnés par l'évaluateur