Brand New Days~素敵な明日をあなたと~

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Brand New Days~素敵な明日をあなたと~ [螺旋の月]
サークル名 螺旋の月
販売日 2021年05月16日
シリーズ名 Brand New Days
カップリング
作者 飛牙マサラ
イラスト 石神たまき
年齢指定
作品形式
ファイル形式
その他
ジャンル
ファイル容量
799.84MB

作品内容

1

「……忙しすぎる」
 四月から新任教諭としてキメツ学園で勤務し始めた冨(とみ)○(○○)義(ぎ)勇(ゆう)ではあったが、慣れない業務や授業に追われて日々忙殺されていた。
 漸く今日は休みがまともに取れたが、それでも自分のアパートで休むのが精一杯なくらい疲れている有様だ。
 窓の外から見える快晴の空が恨めしい……
 今の義勇の気分はそれとは真逆だったから当然とは言える。
 胡(こ)蝶(ちよう)し○ぶと再会してもうどれだけ経ったのだろうか。
 離れていた年月を思えば短いのだが、彼女と碌(ろく)に逢えやしないこの状況がもどかしい。
 いや、それは正確ではなかった。ただ逢うだけならば逢えている――ほんの僅(わず)かだけだが。
 その内容が実に嘆かわしいだけで。
 何しろ逢うと言っても朝の登校時か、はたまた良くて廊下でのすれ違いレベルで、それを逢えたことにカウントしていいものかは実に悩ましい。
 だいたい、あいつは多忙すぎて新任の俺が関われるのは挨拶程度が関の山で、担当であれば可能だろう、教師と生徒のちょっとした世間話すら難しいと来た。
 そもそも二人は圧倒的に学校での関わりが少なすぎるのだ。
 残念ながら義勇はし○ぶの学年の担当には当たらず、授業の割り当ても無い。
 お陰様であの日はあんなに近かった距離が今はどうにも遠いったらない……
 現状、二人の関係は教師と生徒などと言う間柄だから義勇から大っぴらに何か行動するわけには当然いかないのだから然も有りなん。
 そしてもう一つ悩みがある。し○ぶが学園内外での人気者であると言うことだ。
 ……あいつは綺麗だからな。
 そうだ、昔も美しい女だった。
 だから今でも当然のように学園で三大美女などと呼ばれるのは納得する。
 が、それを知った時にどれだけ面白くない思いをしたことか。
 ……さぞかし他の男どもにモテるのだろう。
 考えるだけで未だにムカついてくる。
 不埒な輩にあいつには近寄るなと堂々と言えるならこれほど楽なことはない。
 そうは思っても言えるはずもなく、結局いつも己の立場の柵(しがらみ)に囚われて身動きが取れなくなってしまうのだ……
 全ての意味で詰んでいる気がしないこともない。
 もともと時間を作るなど得意ではない彼はどうしても後手に回ってしまうせいもあった。
 ああ、休みの日に一人でいるとどうにも気が滅入る。
 流石に自分が休みだからといって生徒である胡蝶と逢うわけにもいかないしな……
 何で教師になったのか。
 だが、教師になったからこそ彼女と再会出来たのだ。
 全く世の中は儘ならない……
 どうすればいいのか分からないまま、それでも逢いたいと願う。
 前世ではたった一度きりの関係だった。
 あの時、胡蝶から告げられるまで彼女への気持ちに気が付きもしなかったくらいに自分でも鈍感な男だと自覚している。
 確かに再会の約束そのものは果たしたが、それだけで終わらせたくはない。
 あの夜の温もりは忘れ難く、今でもこの手が、この体が覚えている。
 そして再会したあの日に感じたあの温もりもまさしく彼女のものであり、同時にもう二度と失いたくないと強く思った。
 あれ以来、義勇自身も何とか話しかけようと試みてはいるが、あからさまに不自然になりそうでどうにも上手くいかない。
 だが、今度こそ言葉でちゃんと想いを伝えたい、そう思う。
 尤も彼の場合にはそれが一番難しいのだが。
 それでもそうすべきだと理解はしているから迷うまいと思う。
 ただやはり問題は二人の関係性だ。
 何しろ教師と生徒である――これはどう考えても彼と彼女にとっては間違いなく大いなる障害だった。
 だからと言ってこのまま卒業まで何も伝えずにいることはしたくない。
 ではどうすればいいのか悩むが、幾ら考えても一向にいい答えなど出ないままだった……

2

Brand New Days~素敵な明日をあなたと~ [螺旋の月]

慌てて義勇は椅子からさっと立ち上がろうとするが、し○ぶは回した手を外さない。
 結果、そのまま互いのバランスが崩れて、そのまま義勇は彼女ごと落ちる羽目になった。
 咄嗟にし○ぶを庇いながら何とか体勢を整えられたので横倒れずにはすんだが、床に座る形になってしまい、二人の距離は余計に縮んだ。
「胡蝶、怪我は……」
 それでも何かあってはと思い、確認をする。
「無いです、義勇さんが庇ってくれましたから」
 何だかんだで護ってくれるんですね。
 それは素直に嬉しい。
 だけど誤魔化そうとしても無駄ですよ。
 義勇さんのこと、口下手のくせにお喋りな人だって知ってるのは私だけなんですから。
 実際に私を心配してくれていることは分かっているけれど。
「それは良かった。立ち上がれるか?」
 片膝を付き、彼女に手を差し伸べながらそれでもなお二人の距離に一線を引こうとすべく義勇がそう言うが、その行動はし○ぶの導火線に火を付ける結果になった。
 この千載一遇のチャンスを逃して堪るもんですか!
「嫌です! そんなふうにして言い紛らそうとしないでください! たとえ……たとえ姉さんが何て言っても嫌なものは嫌です!! 離れたくないんです!!」
 彼のジャージの胸元を掴んでそう叫ぶ。
「胡蝶……!」
 彼女の気持ちは分かりすぎるほどに分かるため義勇も何も言い返せなくなった。
 とは言え現状をどうにか出来るような案など浮かばない。
 義勇が考え倦ねているとし○ぶが突然そうだ、名案とばかりにパンッと手を打った。
「学校は駄目……それなら要は学校じゃないならいいんですよね? だったら義勇さんの家ならいいですか?」
「いや、それは……」
 もっと問題がないかと思ったが、次の瞬間し○ぶから香る匂いに気を取られた。
 ……藤の花か。懐かしい。
 そう思った次の瞬間にはし○ぶを抱き締めていた。
「――っ!」
「……お前の匂いだな」
 自分でもそうした行動に驚きながら義勇は懐かしそうに言う。
「覚えていてくれたんですね」
 もう……いきなり抱き締めるとか本当に唐突な人なんだから……
 でも、でも! 私の匂いと言ってくれた! 忘れないでいてくれた!!
「忘れるわけもない……」
 し○ぶの心を読んだかのように義勇はそう言った。
「……はい」

2

彼女の華奢な体を己の腕に閉じ込めながら自分の気持ちを言うべきか悩んだが、後悔するのはもう沢山だ。
 だからこの際、二人の関係性などは一旦忘れ去ることにした。
「……今、言うのはどうかと思うんだが」
「何ですか?」
 し○ぶは彼に抱き締められながら胸の鼓動をときめかせて次の言葉を待つ。義勇は自分に身を任してくるそんな少女の耳元で囁くように言葉を紡いだ。
「……昔、別(わ)離(か)れる時、俺はお前に待ってろと言ったよな。その時にちゃんとした言葉で伝えてなかった。その、お前を好きだと」
 照れくさいことこの上ないが今言わずしていつ言うのかと思ったのだ。
 その言葉を聞いた瞬間、し○ぶの瞳が輝き、とびきりの笑顔になって彼に抱き付いた。
「……凄く、凄く嬉しいです! 私も大好きですよ、義勇さん!! 私、待ってて良かったです!!」

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