一陣の光さんのレビュー一覧

強面(こわもて)な外見、とは異なる、相手を想う優しさが、
強く印象に残る、表題作・第十六話～第二十二話が収めら
れた”山田怜”先生の長篇作・三巻目。
印象的な収録作品は、押し切られる形で”海”にやってきた
主人公君。海岸では”料理”を作り、食べてもらう事が出来
ず・・・な第十八話「海だ!真夏の卵のっけ焼きそば!!」。
訪れた”海の家”で、人手が間に合わず、手伝う事になった
主人公君が、イキイキしてくる、お話でした。
読んでいて印象的だったのは、周りからは、強面っぷりが
ますます、向上している主人公君ですが、読者の観点から
みていると、穏やかな表情が”マシマシ”な彼が、強く印象
に残りました。”相手の喜ぶ顔が至上の喜び”、な彼の一冊。

清楚で真面目な、おとなしい印象のキャラクターデザイン
と、ちょっとした事柄から、脳内で発展してゆく”妄想”と
のギャップが、四コマ形式の本作を強力に推進させている、
”さんりようこ”先生、表題作の一巻目。
印象的な収録作品は、”やらないで寝ると会社で～”とか思
いつつも、会社で・・・な「そりゃ言えねーや」。
読んでいて感じたのは、大人の階段を”一歩・一歩”登って
ゆく、のではなく、エレベーターで垂直上昇する様な経験
値の上がり方。後先を思慮深く・・・では無く、気持ちや、
その時々な感情を優先してゆくヒロインの姿に、女性作家
な”さんりようこ”先生の、想いが詰まっている様に感じま
した。ぶっ飛んでるけど、その行動力に憧れを感じる一冊。

主人公君に訪れる”幸福と転機”が、劇的な流れを呼ぶ
”小林拓巳”先生の長篇作・最終巻。
印象的な収録作品は、憧れていた先輩・女子に”告白”
され、驚きと共に受け入れ、幸福の絶頂的な日々をす
ごす主人公君・・・な「第二十一章・熱い時刻(とき)」。
”華の命は短くて”な展開ではありますが、話の結末と、
主人公君をしっかりと受け止めてくれる”存在”がいる
ので、不安感無く、お話の終焉まで読み切る事ができ
ます。急展開ではありますが驚きと劇的な結末の一冊。

厚みのある”土偶”姿のヒロインが、強力なインパクトを
放つ、”あるスズキ”先生の表題作・第一話～第十四話が
収録された作品集。
主人公君とヒロインが”初キス”。翌日、あらわれた彼女
は、何故か(なぜか)、”土偶”姿で登校し・・・なストー
リー。
読んでいて感じたのは、そんな”姿”のヒロインを、彼女
の友達は普段と変わらず接している点。彼氏な主人公君
も、以前にも増して、尽くしてくれる彼女にドンドン惹
かれて(ひかれて)ゆきます。人を好きになる、というこ
とは、外見からなのか、それとも心根(こころね)なのか
を問う、案外、哲学的な要素を含んでいるな、と感じま
した。作品の空気感はコミカルで、軽快な読後感の一冊。

洗練された絵柄と、日常のよくある出会いをストーリーへ
と盛り込んだ展開が光る”東タイラ”先生、雑誌”ビタマン”
2016年4,5月号及び、7～11月号に掲載された、短篇七本
が収められた作品集。
印象的な収録作品は、自動車販売店で優秀な成績のセール
スレディであるヒロイン。五年間、がむしゃらに働いてき
たのに、張り詰めていた”糸”が、切れた様になってしまい、
な「美人店員、試乗できます」。お客として来店した男性
に”相性の良さ”を感じたヒロインが、大胆に彼を誘う流れ
の流麗な短篇でした。
読んでいて印象的だったのは、制服やランジェリーを詳細
かつ丁寧に描写する、その筆致。現実にありそうなストー
リーをより、リアルに感じさせます。優美な読後感の一冊。

メリハリのある作画と”人情話”な展開。”犬吠あか太”先生
の表題作12本が収められた作品集。
ストーリーは、その昔、交通機動隊の最前線で活躍し、今
は警ら班で”余生”をすごす、”自意識”のあるパトカーさん。
配属された新人女警(じょけい)とのコンビで、日々の業務
をこなす日常をコミカルに描いていました。
読んでいて感じたのは、”気骨ある自意識”をもったパトカ
ーさんの”一人語り”で、牽引してゆく展開が、他には無い
読み心地を醸し出しているところ。
次々に登場する”ひとクセ”ある女性キャラクターと、小ネ
タ的パトカーの知識が、豊富に盛り込まれた、快活な一冊。

短篇16本、300ページを超える”特大ボリューム”で味わう
”ツカモリシュウジ”先生の作品集。
印象的な収録作品は、実家が”そば屋”な主人公。人手不足
から”ギックリ腰”でも休めない彼の母に代わり、バイトで
入ったヒロインと・・・な「更科小町」。スタイルに自信
が無く、処女なヒロインの体当たりな”告白”が印象に残る
短篇でした。
純愛あり、不倫ありな、バラエティに富んだ設定で様々な
出会いを紡ぎ(つむぎ)出すストーリーが、ボリューム感満
点で楽しめました。お気に入りの作品が必ず見つかる一冊。

時代が移り変わっても、男・女の関わり合いは変わらない、
という事を実感させてくれる”酒井美羽”先生の、表題作を
含む、四本の短篇が収められた作品集。
印象的な収録作品は、予備校理事長の娘で”お嬢様”なヒロ
イン。講師をしている主人公が、お気に入りで・・・・な
ストーリー。”わがまま”に見えるヒロインですが、芯の強
さ・一途さをもった女性として描かれていて、記憶に残り
ました。
執筆された当時の時代背景が、展開に色濃く反映されてい
ますが”酒井美羽”先生が描く、男・女の出会い・関わり合
いの本質は”不変”。それゆえ、却って(かえって)そのドタ
バタぶりが、心地よい読み心地を提供している様に、読ん
でいて感じました。男・女の不思議な出会いを描く、一冊。

ボリューム感のあるカラダが、パワフルにカラむ、エネルギ
ッシュな展開が魅力な”志峨丘トウキ”先生の短篇七本が収め
られた作品集。
印象的な収録作品は、体育会系の性格でレスリング”無敗”な
ヒロイン。ライバルだった女子に、彼氏と赤ちゃんが出来て、
無敗神話が危うくなり・・・な「無敗女王の愛し方」。レス
リング一筋で、恋愛の仕方も知らない、不器用なヒロインが、
主人公へ一途に告白する”姿”から上手く表現されていました。
テクニックや駆け引きの無い、真っ直ぐな”想い”の伝え方と、
そこから派生する、パワフルなカラミが”志峨丘トウキ”先生
作品の”真髄(しんずい)”だと、読んでいて感じました。スト
レートな展開から、軽快な読み心地・読後感が味わえる一冊。

”ある女性”を探し求め、ひとり、街を、さすらう主人公が
強烈なインパクトを放つ、”竹下けんじろう”先生の表題作
acme.7~12までが収められた、長篇作・二巻目。
印象的な収録作品は、美人な先輩と付き合っている、武骨
な後輩男性。彼女を”逝かせたコト”の無い彼が、主人公に
弟子入り、修行する・・・「acme.7真由美」。
読んでいて感じたのは、一途でストイックな主人公と、そ
の周りの人間関係を、コントラスト強く、対比してみせる
構成力の高さ。一歩間違うと”コミカル色”が出てしまう設
定を、的確な構成で推進力へと昇華させてゆく”作家性”を、
さりげなく感じさせてくれます。様々な状況に置かれても、
懐(ふところ)深く受け入れる主人公が、ある意味凄い一冊。