ねぼすけ的鑒賞一覽

フリーゲームのシルフェイド見聞録をご存知なら、同作者の似たようなノリの作品だといえばある程度は見当がつくかもしれません。
パワーのある独特なギャグやシリアスの展開も魅力的ですが、その中でふと垣間見える等身大の感性がまたいいと思います。

ゲームの展開として大きく2つに分かれており、条件を揃えると入れるルートで育成色が強くなります。
周回ごとに引き継げる要素もあります。

ダメ男というか、生活不安や自分を劣等せしめる物差しの重圧に押し潰されてしまっているのかなと思いました。
女の子は溢れんばかりの慈愛を持ってはいるのですが、彼女自身も不安から相手を依存させ、そんな関係に依存しているところがあります。
根本的な部分では二人は同じ問題を抱えているのでしょう。
全体的な流れとしては、男性が女の子を受け入れるまでのお話と言えるでしょうか。
ただ表紙で二人を見やる別の女の子の表情が、これからの二人を取り巻く状況の厳しさを暗示しているようにも思えます。
出来れば二人が不安を感じずに済む社会システムであればいいなとも思います。

蟲をモチーフにした伝奇バトルもの、という厨二的側面に惹かれて1章を読んでみたところ、
背景にある思想や感情の描写が予想外に好みなものだったので、4章まで一気に読んでしまいました。
主人公「二條久保」を通して伝わってくる素朴な、あるいは偏屈な愛情の数々が輝いています。
生命賛歌というのでしょうか、命、力、孤独…それらに纏わる暖かなメッセージが、
この物語の根底を形作っていると感じました。