鬼風

  • 鬼風 [ロールシャッハテストB]
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鬼風 [ロールシャッハテストB]
販売日 2022年11月29日
カップリング
作者 まさみ
イラスト ごまだれはまち
年齢指定
R18
作品形式
ファイル形式
PDF
その他
ページ数 47
ジャンル
ファイル容量
624.96KB

作品内容

あらすじ

裕福な商家の奉公人・春虎(チュンフー)は、生来気弱で優しい性格故に仲間たちにいじめられ、ある月夜の晩に一人で肝試しに行かされる。
そこで彼が出会ったのは異形の醜さを忌み嫌われ、廟に封じられていた不可思議な鬼神だった。

春虎と彼によって鬼風(クイフェイ)と名付けられた鬼神は主従の契約を交わし、新しい日々が始まるのだが……。
絶対に素顔を見せないミステリアスな鬼神と健気な奉公人の主従BL。

(中華ファンタジー/人外/鬼神×奉公人/不細工攻め×健気受け)

イラスト:ごまだれはまち(@gomadarehamachi)様

作者のTwitterアカウント https://twitter.com/wKoxaUr47xGeAZy
@wKoxaUr47xGeAZy
(作品の裏話や情報を更新しています)

本文サンプル

「ひっ、ひっ、ひ……ごめんなさい、罰当たりでした、もうしません、廟を荒らしてごめんなさい……」
「いーや、許せねえな」
「!」
凄まじい勢いで顔を上げる。
廟内に殷々と何者かの声が響く。
「罰としてガキ、俺を逃がす手伝いをしろ」
「だれですか?」
「誰だって?しゃらくせえ!」
酒場でくだ巻く無頼漢さながら伝法な啖呵を切り、けらけら笑いのめす。
そこらじゅうで物音が立ち、柱と床板がみしりと軋む。
「ば、化け物……」
「おうとも、化け物だ!」
あちこちを殴り付けて回る音がやみ、春虎の鼻先に渦を巻いて埃が乱舞。
「おもての雑魚どもが言ってたろ?いくら血の巡りの鈍いガキだって危険な場所には危険なもんがいるって察しがつくだろ」
「廟に閉じ込められてるっていう……」
「鬼神ちゃんだ」
あっけらかんと宣言。
竜巻を纏った何者かはすこぶる上機嫌に続ける。
「陰気が高まる新月の晩、復活にゃお誂え向きだ。百年かかってようやっとここまで力を取り戻した、が、限界だ!だめ、むり、お手上げ、降参!おいガキ、そこに貼ってある札が見えんだろ?」
目を瞑りたい衝動に抗い、やっとの思いで眼球から瞼をひっぺがし、示された方角を向く。
「アイツをとれ」
「できません」
即答。
鬼神は激怒する。
鈍い音が連続し衝撃波が炸裂、天井床壁に自暴自棄の無軌道さで力の塊が衝突して撓む、癇癪の暴発に両耳を塞ぎしゃがみこむ。
「できませんってな何だクソガキ、俺は百年もおんぼろ廟でひとが通りかかンの待ってたんだぞ、数十年ぶりにやってきた人間だ、うんと言うまで返すもんか!」
「だ……だって、悪いものなんでしょ。さっき他の魔物たちが言ってた、悪さのしすぎで封印されたって……解き放てば悪さを働く、お屋敷の人たちを困らせる、旦那様に仕返しする!」
「はッ、俺あそんな度量の小せえ男じゃねえぜ!だいいちとっくに代替わりしてんだろうが、俺を廟にぶちこんだヤツは憎いが子孫にまで恨みはねえ」
「駄目、だめです!悪いことしたから百年も閉じ込められてるんだろ、人を祟って死なせて作物枯らして……悪い病をまきちらして……お前は悪い魔物だ、外にでちゃいけないんだ、永遠にここにいろ!」

コイツを解き放てばたくさんの人が不幸になる。
ありったけの勇気を振り絞って怒鳴れば、唐突に騒音が病んで廟に静寂が戻る。
しばらくして聞こえてきたのは、しおらしい嗚咽。
春虎は大いに当惑。

「………泣いてるの?」
どうして?
凄い力をもってる、凄い悪い魔物なのに。

「悔い改めてやり直そうとしてる俺様を黴くせえ、埃っぽい、こんな廃屋に永遠に縛り付けようってか。人間はくせに血も涙もねえ」
「あの」
「ド外道当主め、いっそ殺しゃよかったんだ、これじゃ生殺しだ。じめじめ薄暗い闇ン中に閉じ込められて話し相手もねえ、百年前は自由に空を飛び回ってた俺様が今じゃこのザマ、床下のネズミにだってシカトされる始末」
よよと泣き崩れる。
まるで自分が泣かせてしまったみたいなバツの悪さ。
「誰も彼もが悪党って決め付ける、改心したって訴えても信じてくれねえ」
「改心したの……?」
「百年も廟にぶちこまれたんだぜ、いやでも改心するさ!今じゃこのとおりすっかり心を入れ替えて……そうだ、取り引きしようや」
名案を閃いたと嬉々として。
「身なりから察するにお前、下働きだろ。毎日毎日牛馬みてえにこき使われてんだろ。封印解いてくれたら家来になって恩返ししてやる。貢献するぜ俺さまは」
「信じられない……改心したって証拠を見せてよ」
「経でも唱えりゃいいのか?」
「僕一人じゃ決められない……旦那様に相談しないと」
春虎のすぐ後ろで轟音が炸裂。
反射的に凍り付く。
「わっかんねえかなあ、ンなことしたら丸損だ。お前の家来になってやるって言ってんだぜ?旦那様なんぞ担ぎ出したらせっかくのうまい話がパアだぜ?千載一遇の好機を棒に振るのか」
鼓膜をざらり舐め上げる声のいやらしさに鳥肌が広がる。
「俺が付いてりゃ百人力だ、どんな辛え仕事だって一瞬で終わらしてやる、人間どもが崇め奉る鬼神サマだからな」
「でも……」
「煮えきらねえ奴だなあ」
舌打ちの後ははぁんとひとり合点。
「こんな夜更けにガキが廟に迷い込むとは面妖だとおもっていたが、なるほどね、朋輩にいじめられたんだな」

本文サンプル

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