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ボク‘森崎慎也(もりさきしんや)’は、ママの誕生日プレゼントを買いに行った帰りに横道から飛び出してきた怪しげな男とぶつかった。
飛び出してきた男は、謝りもしないでさっさと立ち上がり駆け出していく。
ボクがムカムカしていると、同じ横道から別の男たちが飛び出してきて、さっきの男を追っていく。
やがて激しく抵抗する男を、複数の男達が押さえつけようとする。
――と、押さえつけられている男がポケットからビンを取り出して、錠剤のようなものを飲むのが見えた。
「チッ、しまった。薬を飲みやがったぞ!」
次の瞬間、男の身体が見る見る透けていくような錯覚を覚えた。
いや、錯覚なんかじゃなくて、実際に透けてどんどん姿が見えなくなっていく。
「!?」
見えていることが信じられず、思わず唸り声を上げて凝視してしまう。
けれどいくら目を擦って見ても、何も変わらなかった。
男の姿がどんどん消えていく。
そして薬を飲んだ男も、それを追っている男達も、別の脇道に入っていってしまい、見えなくなってしまった。
「な……なんだったんだ、今の……」
あまりにも非現実的な出来事に、呆然としてしまう。
良く分からないけど……関わらないほうがいい……
そう思って早くここから立ち去ろうとしたとき、ボクは、爪先に小さなビンがあるのに気付く。
それは、さっき逃げていった男がポケットから取り出したビンと、そっくりに見えので、拾い上げて、マジマジと見つめる。
あの男が飲んだのと同じ錠剤がいっぱい入っている。
これってまさか……。
さっきの光景を思い出し、ゴクリと唾を飲み込んだ。
キョロキョロと周囲を見ると、誰の姿もなかった。
誰も見ていない――そう思うと、ついついビンをポケットに入れてしまう。
早くここから離れよう……。
緊張しながら歩き出す。
さっきとは違った理由で、早足になっていた。
薬の存在を知ったボクは、大好きなママに対し、沸き上がる
欲望的考えを試そうと考えた。
「ママ……いいよね?」