こおろぎさんのレビュー一覧

伊原の眼帯が取れ、二人の甘々な生活が本格的にスタートする時期が描かれています。

この作品では特に、匠の心の変化が楽しめました。
匠にとって、視界から伊原の姿が消えるのは大きなトラウマになっているのですね。家の中で、伊原の名前を大声で呼ぶ匠がとてもせつなかったです。

自分が伊原に対して思うほどに伊原は自分を必要としていないと思い込む匠と、そんな匠が大事で仕方のない伊原。
今は長年連れ添った夫婦のような二人ですが、この時点では心情的にまだ不安定で、互いの気持ちを確かめ合おうとする二人の微妙な雰囲気が感じられます。

なぜか何度読み直しても飽きることがなく、作者さんの長編の中ではこれが一番気に入っています。

GYMシリーズにはまったのは、この作品がきっかけでした。自分にとってかけがえの無い人であるからこそ失うのが怖い、匠の気持ちが痛いほど伝わってきます。

「24」で二人が寄り添って寝ているシーンがありますが、作者さんはこの作品を意識して描いている気がします。

出会えたことが奇跡に思える相手がそばにいる幸せ。小品ですが、心に残る印象深い作品です。

今回、内容がかなりシリアスということで、レビューが出るまで買うのを少し躊躇していましたが、DLして正解でした。
伊原を囲んで久遠、柳瀬、匠の緊張感あふれる3人のかけひきが見ものです。特に、久遠に対して匠が本気で怒った顔がかっこ良かったです。伊原が何気に匠をかばう姿にもぐっときました。

やはり、久遠は伊原にあこがれ以上の感情を持っているのですね。伊原に「なるべくアンタの視界に入らないように気を付けるからよ」と言われてショックを受けた、久遠の顔がすごく印象的です。
今後の、二人の互いの牽制が気になります。