耳かき好きさんのレビュー一覧

門外漢がこういうことを書くのは失礼だと思うのですが「自然な演技をする」のは凄く難しいことじゃないでしょうか。
今、主語を書き忘れたのですが、この音声作品でパロポロちゃんを演じられている浅見ゆいさんのことを思い浮かべていたんです。
でも、「こんな人物を書こう!」とシナリオを書かれた進行豹さんがいて、「こんな人物を描こう!」とイラストを描かれたCuraさんがいて、もっと「この音声作品を作ろう!」と関わった人がいて、そんな大勢の人が「一つの世界を演じ」、その世界の中の一人の登場人物であり、この作品の主人公としてのパロポロちゃんの音声に集約する浅見ゆいさん、という意味では主語が大きすぎて書かないでいいのかもしれません。
子どもらしい朗らかさ・純朴さと共に陰翳をパロポロちゃんに与えた進行豹さん。神の子池のように透き通りながらゴシックな輪郭でパロポロちゃんを切り出したCuraさん。そして、浅見ゆいさんの声質とテクニック。その全てがパロポロちゃんへの愛で一直線に繋がっています。だからこそ、その先に「自然に」パロポロちゃんが立っている、と聴き手は感じられるのではないでしょうか。
ところで、今作の冒頭で驚きと感動を覚えました。というのは、恐らくですがエゾハルゼミの合唱が聞こえてきたんです。
僕は実際には聞いたことはなく、間違っていたら申し訳ないのですが、ウィキペディアによるとエゾハルゼミは5月下旬から7月にかけて鳴き声を聞くことができ、北海道・本州・四国・九州に分布しますが、西日本の分布は標高の高い山地に限られるそうです。
パロポロちゃんが故郷で馴れ親しんだであろうセミの声が、遠く離れた四国の山奥でも彼女を包んでくれている……意図された演出だとしてもすごいのですが、そうではなさそうな様子も窺えます。
茂伸は高知の山奥なのでエゾハルゼミがいると思われます。
その鳴き声が偶然なのだとしたら……。

まず始めに、みかんでお手玉をすると聞くと眉をひそめる方もいるかもしれない。
食べ物を粗末にしてはいけない、食べ物で遊んではいけない、と心がけられているからだろう。

みかんは軽い衝撃を与えることで味が甘く変化するという。
この作品に登場する人物はみかんをこよなく愛する。
みかんは剥き方によっても甘くなる、そして聴き手にもその方法によってよりおいしくみかんを食してもらいたいと発言していることからもそのことがうかがえる。
だからもし彼女がお手玉をするとすれば、愛するみかんをただ漫然と口に入れるのではなく、ひと手間をかけてでもよりおいしく味わいたいという心の表れだとも察せられる。たとえ手からとりこぼしたみかんがあったとしても、後で残さずおいしくいただいているに決まっている。

しかしながら、彼女がお手玉じたいを楽しんでいる側面もなくはないだろう。
ここで思いを巡らせてほしいのは、私たちが食べ物を粗末にしてはいけない、と学習した原体験はどこにあったのかということである。
それは祖母であったり、母親であったり、保育士さんであったりと、幼少のころの自分を育んでくれた誰かによってもたらされたものではないだろうか。

彼女にはそのような誰かはいなかった。
ただ生まれ持った人に対する善性のみをアイデンティティーとし、彼女はある日、ぽつ、とこの世に独り生を享けたのである。
「人間を助ける」という生来の性分にのみ基づき、私達の尺度で八十年の歳月、彼女は叱られもほめられもせずに一人過ごしてきた。「ものべののカミさん」のすすめにより故郷を後にし、高知にある隠れ里「茂伸」に身を寄せてきたのはついさいきんのことである。

長い旅を続けて茂伸に迷い込んだあなた。山歩きに疲れた足をふと止めたのは、微かに聴こえるあどけない歌声。

そして、深い竹林の風にざわめきうねるその奥で、彼女とあなたは出会ったのである。

波音と水中音が同時に聴こえるのはありそうでなかった組み合わせでよかったです。
ただ、自然音なのに海外のラジオ音楽番組?のような人々の話す声や笑い声、咳払いなどが背景でうっすらと聞こえてきて「??」と思いました。
全体的に落ち着いたエキゾチックな曲調で不思議な感じです。

あめじすと様、Lumikki様がレビューに書かれているように、製品版には33分(full)と6分30秒(short)の2種類の音源が入っているのですが、
full音源のほうはshort音源のリピートで構成されているものではなく、33分で一つの作品として構成された音源になっています。

例えばサンプル(6分30秒)の中に校舎で奇声を上げている生徒さんがいますが(笑)、full音源ではその部分は序盤で1回流れるだけです。サンプル(short)音源が最初に流れた後、full音源独自の展開がある、と言ったほうが分かりやすいでしょうか。

全体的なイメージをこわすことなく、メロディが変わったり、同じメロディでもリズムがゆっくりになったりと飽きないつくりです。環境音もトンビの鳴き声などfull音源にしか入ってないものもあります。
他にも、教室の木の床を踏む音?でリズムを取ったり、様々な音楽から海辺の学校の日常風景が浮かんできて懐かしい感じがしました。

耳かきの音は人それぞれ好みがあると思いますが、自分にはどストライクでした。
綿棒と耳かき棒の音が特に良かったです。
最初に綿棒が入ってきて数秒で「うわああああ!すごい!」と思いました。
耳壁をすり上げるように、うねるように、音の強弱というかグラデーションというか「しゅわしゅわ…」という優しくなでる音と「ﾊﾟﾘﾊﾟﾘ…ｯ」と小気味よくクリスピーに爆ぜる音が同時に合わさって「ｹﾙﾙ…ｷｭﾘｨイ」とターン、綿棒が氷上のフィギュアスケーターのごとく、その奏でる音が耳の中を回転、ステップと緩急をつけながら自在に滑り、大きな画を描いていきます。

そして、耳かき棒。
綿棒がオーケストラなら、耳かき棒はバイオリンの独奏者のようです。
それも、ゆったりとしたストロークから情感たっぷりの厚い音で魅せるというよりは、正確無比なボウイングでスタッカートを刻むように、静寂の中に響く孤高の求道者のような音です。サクッと焼き上がった幾層ものパイ生地、その中の一枚一枚を慎重に丹念にはがしていくような感じがします。

癒しタイムの後半にある耳かきが気に入っています。
両耳で7分ほどと今まで聴いた作品に比べると短い部類に入るのですが、なんとも言えない良さがあります。
まず、そのスピーディーさが、近所にありそうな昔ながらの床屋のおまけ?でしてくれる耳かきのようで、何か特別感があるんです。
次に、耳かきの音。一本の耳かきでカリカリ、コショコショ、ペリペリ…といったような色んな音がして、独特で好きな音です。
そして海里さんの語りかけ。それまでの明るく元気な話し方と打って変わって、耳かきのときはヒソヒソ声になります。悪戯っぽくくすぐるようなささやきがいいです。
作品全体としても、ドラマがありますし、自然の背景音が豊富で心地よさがあります。

セラピストさん方数人が癒してくれる作品です。
落ち着いた雰囲気で、豊富なメニューにおまかせして身をゆだねるだけで、たまっていた疲れが少しずつ癒されていくのを感じました。
施術中は簡単な説明のほかはただ穏やかな時間が流れていきます。
語りかけの口調も施術の音も、静かにじっくりと癒されました。

システムがよく練られていて仕入れ販売、季節ごとの経営会議、探索、と3つのパートが相互補完してお店の成長につながっていくようになっています。
この3つをバランスよく連動させる面白さ、醍醐味がありますが、最初のうちは説明を聞いても何が何だか分からなく、適当に回しているだけでも少しずつ儲けは出るようになっているのが親切だと思います。そこから「ここをこうすればもっと効率よく売り上げがアップする」と試行錯誤していくのが楽しみでもあります。そうそう簡単に売り上げがあがらないのもやりがいがあって、難易度のバランスがいいと思います。

夜空の箱舟を聴いて、こちらもロケをされた作品らしいので購入しました。
夜空の箱舟は早春?の雪が残る時季ですが、こちらは初夏みたいですね。
耳かきの前に息を吹きかけるのは珍しくて面白かったです。夜のかえるの合唱が背景音で使われててよかったです。自分はかえるの合唱が好きで、日本の田舎の音風景だなーと思うのですが、耳かき音声でここまではっきり使われているのを聴いたのは多分初めてだった気がします。おまけで背景音だけの音源があるのも嬉しいです。

イヤーエステのところだけ時々聴いています。耳かきをしながら「ここは掃除というよりマッサージ云々」のところがすごく共感し、実際にそうされてると想像するとすごく心地よいです。
雪解けのしたたる音や波の音など静寂につつまれた背景であるのが落ち着きます。本編とは関係ありませんがこぼれ話で、「ロケ先で美味しいものを味わうつもりだったけど録音に入れ込みすぎて逃した」というエピソードが好きです。