もし、自分だったらどうしていただろう…?
そんなことを考えずにはいられないお話でした。
時代背景やそれぞれの出自を考えると、互いを想う気持ちだけではどうしたって公には踏み込めない線、何をやっても乗り越えられない壁というものは確かに存在していて。
この作品では、一線を越えてはいますが、そこはそれ。
本妻と妾の子。腹違いの兄妹。
どれだけ想い合っていても、誰からも認められないであろうことは明白で。
そうなると、やはり選択肢として「駆け落ち」が出てきますし、本作でもそれを実行しています。手を取りあい、どこまでも、ひたすらに遠くまで。
知っている人のいない場所で、夫婦のように身を寄せあって。やっと訪れた幸せな時間。
けれども、逃げてきたという事実が不安や焦燥感となって常にまとわりつく。
そして訪れる、あの日。
許されざる愛は、結末をどこへ連れていくのか。
ぜひ聴いて、たしかめて欲しいです。
ついさっき全編聴き終えたところですが、それからずっと自分の中であれこれ反芻しながら、結末について考えています。
悲しいと感じる人も、良かったと安堵する人も、どうしてと憤る人もいると思います。
なぜ、と宛所のない問いを発する人もいるかもしれません。
聴いた人それぞれの感想を持つことになる、そんな作品だと思います。
私は、この結末で良かったと感じました。
タイトルに悲恋とついてはいますが。
手放しで喜べない愛。
ひっそりと手のひらに包むように、そっと大事に大事にして。
重ねてきた想いと時間が、そうさせたんだろうなって。
今回も八神さんの迫真の演技に、作品の世界へ一気に引きずり込まれました。
兄として、従者として、そして男として。
それぞれの立場や感情での声の違いもぜひ聴いてほしいです。