BG4巻で、ついに仙台を離れる大。
前半はその様を情感たっぷりに描き、後半は東京の街の簡単にはいかない険しさが描かれています。
大の台詞に「東京は…リアルだな」というものがありますが。
ここでの険しさは本当にリアルです。
お金のない、身一つで上京してきた夢見る若者にとって、東京は決して優しくはない。
玉田の家に転がり込んで、住処に困らなかったのは幸いにしても、バイトして給料が入るのは1カ月後で、練習場に据えた波止場もヤンキーのたまり場になってる。
映画では描かれなかった険しさがふんだんに描かれた後半でした。
ただ、物語としてはやはり、仙台編を完結させる物語の数々は本当に素晴らしかったです。
雪辱を果たしたジャズバーでの一幕。
家族に初めて聞かせる、閉店したスーパーでの演奏。
最後のレッスン日、レッスンせずに師匠が教えてくれた過去と、先輩から後輩への餞の言葉。
宮本大というブルージャイアントに求められた、最初のサイン。
まさにこの作品らしい情感の豊かさ。
結局恋人として、恋人らしい関係にはなり切れなかった三輪さんとの一幕もまた味わい深い。
また、東京編にしても、
「険しさがあればこそ、人情がまた深く染みる」
といった構造を取っているのがまたこの作品らしいというか。
屋形船の一幕などは実にこの作品らしい。
映画では屋台船は舞台背景として、原作ファンに「おっ」とニヤリとさせる程度の存在ですが。
彼の初ギャラへの喜びは、焼き肉屋での一幕という形で引用されています。
そして、第32話「PIANO MAN」。
東京編の主役とも言われ、映画では彼を主役に据えてはどうかと立川監督から提案があったほどのキーパーソン。
そんなピアニストとの出会いが描かれてこの巻は終了。痺れますね。
ノベライズのタイトルがこの回のタイトル、というのもまた渋い。
ここからさらに盛り上がっていく物語を示唆する、強烈な結末でした。
最高過ぎますわ……。