穂積さんのレビュー一覧

なるほどね。
本作の猫娘は内閣総辞職ビームの時の農水大臣のごとく「九魂祭」の喧騒からは離れていたらしく、古参ながらも結果として後々の登場になったらしいです。
サンプルを聴いても分かる通り安らかに温和な話し方で、若手の猫娘には無い落ち着きがあり、クーデター主犯格みたいな圧も無い安心感を提供してくれました。
もっとも、シリーズとしてのつながりを意識しすぎてるせいか、マッサージの最中などに他の猫娘の話や「九魂祭」の後日談が頻出するため、昔話ばかり語るお婆ちゃんを連想してしまいました。
いえ、それも悪くありません。
なぜなら癒しの究極形とは、若いギャルの励ましでもなく、ママの抱擁でもなく、エッチなご奉仕でもなく、お婆ちゃんとの縁側で日向ぼっこだからです。
本作はそんな安息の時間に没入させてくれました。

他ならぬ折笠愛様と聞いては居ても立っても居られず後先考えずに買ってしまったのですが、やはりヘアカット部分はあまり没入感を感じられませんでした。
いえ作品側に何らか不備があるわけではなく、こちとら頭にカットするような物は残っていないので今ひとつ現実感の無いシチュエーションでした。
特に本作の主人公視点は女性のように髪のボリュームが多い印象の発言が頻出し、髪があった頃でもそんな立体的なヘアメイクされた覚えが無かったのも一因かもしれません。

一方で、トラックリストで言うと05以降の耳かきパートは最高でした。
美容室のカット椅子のまま耳にも手を付けるのではなく、わざわざ部屋を移動し、和室で膝枕の体勢を案内される流れは最高の一端を担っていました。
あの声優様に膝枕して頂ける機会に心が沸き立ちました。
主人公視点が一瞬ためらった描写もこちらが恐れ多くて気後れした感覚を見透かされたみたいで驚きました。
単なる耳の掃除にとどまらず「安らぎ」を提供してくれている優しい声色でありつつ、安心して全てを任せられる年上女性のコクがにじみ出た声色でもありました。
少しお茶目なんだけど大人の色気に包まれる感覚の時間でした。

元から獣耳と尻尾が生えた獣人がマジックアイテムでさらに一段階上のケモノになっちゃうのは少々の斬新さと同時に濃ゆいフェチ味を感じました。
元からムチムチした商人さんの我がままボディが体毛によって余計に肉感的に進化したボリューム感は一見の価値ありです。
しかも、ケモノなんだから獣みたいな肉欲に支配されて少年を襲っちゃっても全くもって仕方が無いわけです。
不可抗力です。
おまけに、体毛で人肌が隠れるので若い乙女が全裸でも何となくOKな気がしてくる不思議なマジックです。
いや、やっぱりダメです。
ウブな少年には乳首券が発行済みの女体は刺激が強すぎて目のやり場に困るし、胸の谷間に埋まって限界寸前です。
でも、だから良い。
逆レイプ的だけど芯の部分には愛を感じるケモナーおねショタでした。

さーて、今回の商人さんは「サキュバス入門」「ケモナー大歓喜」「メスガキを理解らす」の3本です。
次巻もまた見てくださいね～!ジャンケンポン、うふふふふふ。

総ページ数は作品紹介欄に書いてあります。
電子書籍の場合これは表紙やカバー裏や奥付も含んだページ数なので13ページほど引き、さらに電子版特典ページが12ページほどあるので、計25ページほど引いたのが本編としてのページ数です。
つまり本編は約90ページなのですが、このうちスタートから79ページまで常に何か食べています。
ラーメン二郎を食い、回鍋肉を食い、カップ麺を食い、唐揚げを食い、(中略)、アヒージョを食い、回転寿司を食い、麻婆豆腐を食いつつ、豪快に酒を流し込む生活を綴っています。
約88%暴飲暴食です。

これがまた美味そうなんですよ。
脳内麻薬物質が溶け出したような作画も相まって食の快感を噛みしめている実感が伝わってきます。
個人的にはカツオのたたきを食いたくなりました。
たっぷりのミョウガとネギ他に大葉やニンニクをぶっかけてポン酢に浸した躍動感がフルカラーの美麗な絵で描かれています。
まさに食ってみな飛ぶぞを地で行く料理の数々です。

なお、残る約10ページ分は何かと言うと常識的に考えれば分かることです。
いいですか?約9割ぶっ続けで暴飲暴食してるんですよ。
お待ちかねの健康診断のお時間です。
エッセイ漫画なのにラスボス登場みたいな焦燥感があって失礼ながら笑ってしまいました。

PS:作品側ジャンルタグに「妖怪」入ってますけど「人間」ですからね。
腎臓を悪くした人間の女性ですから。

PS2:ネズミ捕りにかかったネズミはせめて絞めてから焼いてくださいよ。
生きたまま焼いた断末魔の叫びは生々しすぎます。

やっぱ中世と言えば決闘、決闘と言えば裁判、裁判と言えば中世ですよ。
これは漫画だけのご都合主義の産物ではなく、むしろ現実が「権力者が非道を行い、権力者が裁量権を持って身内に判決を下す」権力者にご都合主義がまかり通っていたので、反体制側の勝利の抜け道として利用された歴史も持つ儀式です。
ただ、この決闘裁判、戦う以前に開催にこぎつけるまでが厄介で、何せ真実がどちら側にあろうと戦って負けたら問答無用で罪人確定の、考え方によっては理不尽極まりない制度なので、通常の審議で無実が確定している側はあの手この手で拒むのが通例です。
噂を流して市民を味方につけたり、相手を挑発したり、四方八方手を尽くして、やっと相手が手袋を拾ってくれるかどうかの半ばギャンブルです。
そのギャンブルがひと段落した後で、また決闘と言う勝利の賭けをしなきゃいけないわけで、実態以上に長く徒労を感じると聞いています。
この巻では捕らえられた恩人を救うため決闘裁判に至るまでの奮闘を描いています。
実際の戦いが始まるのは次巻以降になるようですが、それでも全く引き伸ばし感は無く、充分な見応えがありました。
逆にすんなり始まったら決闘裁判って感じがしないので個人的には大正解に思えます。

【良かった点】
(1)「ざまぁ」が無い。
これは人によっては欠点に映るかもしれません。
本来の主人公少女が悪役令嬢を出し抜く展開を、ゲームシナリオを知っているゆえの巧緻とチートで切り抜けて、悔しがるまたは呆然とするヒロインを尻目に「ざまぁ味噌漬け!」と高笑いを決めるのも悪役令嬢モノの痛快さの一端です。
しかし、本作にそれはありません。
悪役令嬢への理解不足から入れ忘れているのではなく、むしろ「ざまぁ」タイミングは随所に接地されています。
本作の主人公つまりアラフィフおじさんは年の功と言うべき大人の対応を見せ、「ざまぁ」ポイントに遭遇しても相手を傷つけない着地点を探り調和を保っています。
それと言うのも彼女にとって周囲の少年少女は敵ではなく、息子娘より年下の子供ゆえに親心で包み込んでしまう優しさがにじみ出た結果です。

(2)悪役令嬢の父が登場
少々ややこしいのですが、「年頃の娘の心理を理解できずに失敗した経験のある父親」が「年頃の貴族令嬢」の中に入った状態で「年頃の娘の心理を理解できずに現在進行形で失敗中の父親」に対面すると言えば分かりますでしょうか。
悪役令嬢の中に入ったおっさんが目の前に居るおっさんに共感し、見ているこっちも共感すると言う共感が共鳴しすぎて何が何だか分からなくなるレベルです。

【苦笑せざるを得なかった点】
(1)ますます乙女ゲームに見えない。
1巻では主要登場人物の紹介や世界観説明に忙殺されて表立っていませんでしたが、この乙女ゲームには属性バトル要素があるらしいのです。
召喚獣やら剣技やらを交えた、少なくとも作画的には本気のバトルが展開されてしまいます。
これ、もうバトル漫画の日常パートなんじゃないかな?ってくらいです。

今回の巻はキナ臭い話も結構あるのに全体的に笑わされました。

例えば、全体統制主義を掲げる美少女ヴィランに対して正義の変身魔法少女が自由意志の何たるかを説いたら「ネットデモのように無力ね」と嘲笑われたのは痛烈すぎて誰かに怒られないか不安になるほどでした。

また、幼い頃は893の恐いお兄さんに脅されて警察に庇護されながらも毅然とした態度で自衛していた少女が、数年後には地方政治単位での権力と言う強固な力を身に着け、戦わずして勝つ防衛体制を構築した反面、ズブズブに癒着しすぎてるせいで今度は警察に探られる側になるのは皮肉が効いていて笑えました。

一方で、欧米的自由主義によって娯楽が栄えて国が豊かになったのと裏腹に、欧米的自然保護規制のせいで第一次産業が雁字搦めになって上手くいかずに職を失い、逆に虐げられる側に墜ちてしまう人の風刺は笑えない現実でした。

なお、これらは一例であり、個人的には水着回のポロリに最も大歓喜だった事を追記いたします。

日本声優界において女幽霊を演じさせたら五指に入ると名高い後藤弱さんの登場とあっては買わざるを得ません。
案の定あたかも自然の摂理かと思うほどに幽霊が似合い過ぎの声質です。
しかも、本作は幽霊であってもホラーなおどろおどろしい雰囲気は全く無く、むしろ親しみ易く、放っといても消滅するんじゃないかと思うほどの儚さを感じる女性なので余計に親和性が高いです。

善行の結果として命を落としたのに、それを自分のせいと断言する心根の清らかさが素晴らしく、幽霊なのに眩しさすら感じてしまいます。
そんな彼女が楽しそうに料理をしている風景を想像できるので、新妻との生活を体感できる作品です。

すき焼きに「おうどんって最初から入れる派ですか?締めで最後に入れる派ですか?」と聞いてくれる部分はシナリオの上手さを痛感しました。
前者でも後者でもなく、彼の答えを受けて「同じです!」と嬉しそうに話す彼女の声は笑顔が見えそうな演技です。
と、同時にこの答えは先入れ派/締め派どちらとも明言しておらず、聴き手のイデオロギーに次第でどっちにも自然と対応できるわけです。

死んでるから心臓無いんですけどね自虐をちょいちょい入れてくるので、麦わらの一味の音楽家がたまにチラつくのは私だけでしょうか。

あと、作中では明言していないので勝手な自己解釈にすぎませんが、21年前でしょ。
だから当時5歳の子は26歳になってるわけで初体面じゃなくて再会では?と妄想すると運命的です。

不満点と言うほどでもないものの、先に言っておくとTrack04のコンビニは流石に違和感がありました。
版権の都合で実際の店内アナウンスが流せないのは当たり前としても、店内BGMも「いらっしゃいませ!」の声も他の客の喧騒も一切の他の音が無く、ヒロインの声だけが聴こえる静寂に包まれた空間は全くコンビニ感がせず、一体ここはどこ?って感じになりました。

声優様ご本人のイメージが先行したと言うと語弊が有りまくりですが、総収録時間で見ると意外とそこまで酒を呑んでません。
意外と呑んだくれていません。
もっとべろんべろんに酔っぱらって酒癖が悪く、ウザいくらいに絡んでくる女性かと思いきや全然そんなことありません。
呑んでいるのは主にTrack01と07だけです。
宅飲みを起点にしつつ、気心の知れた女友達と取り留めの無い会話をして夜を明かし、一緒に居るだけで満足できる距離感に没入する作品です。
彼女は主人公に対して「居るだけで癒される」と言い、その対価として耳かきや歯磨きや耳かきや耳かきをしてくれる献身的で包容力を感じる女性でした。
特に、Track03の歯磨きシーンなんて優しくて丁寧すぎるほどに磨いてくれるおかげで、母性的な面倒見の良さに包まれ、「男友達」を通り越して「息子」になった気分でした。
酒癖は割りと良い方だけど、呑むのは大好きのジャンクなあて大好きの、ママに甘える作品と考えてもいいかも知れません。

この漫画が面白い一因は各登場人物に感情移入し得る、同情し得る背景がしっかり描かれるからだと思います。
この巻だと、全ての黒幕にして悪の権化かと思われていた魔女の過去が追加で語られます(過去編前半は9巻BJ272295にある)。
主人公の父との馴れ初めはほがらかで、あの悲劇からよくぞここまで立ち直ったと言いたくなりますし、この日常がいつまでも続けばよかったのにと願いたくなります。
しかし、それはあくまで過去編であって我々は悲しい未来を既に知っています。
つまるところ業を背負った運命の男女だったわけです。

それらを全て知った後で見る究極の一戦は感慨深いものでした。
10巻(BJ289110)で出題されたテスト「不死身をどう倒すのか?」の解答欄を埋めなければいけないのです。
一見不毛にすら思える戦いながらも手に汗握る迫真の答えでした。